非難と攻撃の一辺倒だった韓国の対日姿勢に変化の兆しが出てきた。軟化というには早すぎるが「なんとか日本と対話の糸口を探したい」という期待がにじみ出ているのだ。背景に何があるのか。
最初の兆候は舛添要一東京都知事の訪韓だ。7月に韓国を訪れた舛添は朴槿恵大統領と会談した。舛添は帰国後、安倍晋三首相に「朴大統領は日韓関係がこのままでいいとは思っていない。改善の意欲をもっている」と報告した。
次は8月の外相会談だった。東南アジア諸国連合(ASEAN)会議の機会をとらえて、尹炳世外相は岸田文雄外相との会談に応じた。尹は「歴史問題で日本が真摯な態度を示せば、両国の複雑に絡んだ糸を少しずつほぐせる」と岸田に語っている。日本の植民地支配からの解放を祝う光復節(8月15日)では、朴大統領自身が日韓関係について「未来志向の友好協力関係にしていかなければならない」と演説した。
3月にオバマ米大統領の仲介で安倍首相と会ったとき、安倍が韓国語で「お会いできてうれしい」と挨拶したのに、目も合わさず完全無視したのとは大違いである。こうしてみると、韓国はあきらかに態度を変えてきている。
なぜ韓国は変わってきたのか。謎を解く鍵は北朝鮮と中国にある。まず北朝鮮だ。安倍政権が日本人拉致問題をめぐって北朝鮮と交渉を始めたのは周知のとおりである。北の出方はまだ定かでないが、とにもかくにも交渉のテーブルについて、展開によっては日朝国交正常化を視野に入れているのは間違いない。
核・ミサイル問題がハードルになるものの、国交樹立後の経済支援獲得が北の最終的な狙いである。韓国とすれば、自分たちの頭越しに日朝交渉が進むのを黙って見過ごすわけにはいかないのだ。
それにも増して中国である。中国は先のASEAN会議で約2年ぶりに日中外相会談に応じた。背景には、周永康前政治局常務委員の摘発で習近平指導部が国内の権力掌握に自信を深める一方、米国の対中警戒感の高まりがある。