お台場にある東京ビッグサイトへの唯一の大量輸送機関「りんかい線」をJR東日本が買収する方向で東京都と調整に入っていると報じられた。りんかい線は、東京都が90%以上の株を保有する第3セクターである、このニュースを目にした人たち、なかでもコミックマーケットのためビッグサイトを訪れた人たちから「料金下がるのかな」「駅員のサービスが良くなるといいな」「乗り換えが楽になりそう」と期待の声があがっている。
「JR東日本によるりんかい線買収が行われたら、東京の西側からお台場への鉄道アクセスは格段に良くなるでしょう。ただ、運賃は期待するほど下がらないのではないでしょうか」と『鉄道王たちの近現代史』をはじめ鉄道や都市計画などの著作があるライターの小川裕夫さんは、彼らの期待がかなえられるのは半分程度ではないかとみている。
「すぐに実現しそうなのは、新宿での折り返し運転が多い埼京線とりんかい線の相互直通が増えて利便性が上がることですね。羽田空港とまっすぐつながれば、空港から東京ディズニーランドへも行きやすくなります。運賃については、品川シーサイド駅と羽田空港を結ぶために新規のトンネル工事が必要なので、建設費を考えるとすぐに下げるのは難しいと思います」
りんかい線買収へ向けて話し合いが始まっていると報じられる3日前、JR東日本は都心と羽田空港を結ぶ「羽田アクセス新構想」を発表していた。2020年の東京五輪開催には間に合わないが、予想を上回る羽田空港の利用者増に応えてゆくための計画で総事業費は3200億円を見込んでいる。
「そもそも浜松町と羽田空港を結ぶ東京モノレールはJR東日本のグループ会社です。ですから羽田空港とのアクセスは会社としてはすでにあります。しかし車両が小さいため、京急とあわせても旅客輸送の増加に対応できず、他社の空港バスが補っているのが現状です。
先日、国土交通省は羽田空港を発着する航空機の制限を緩和し低空飛行の許可を検討する有識者会議を立ち上げました。これが認められれば、航空機の発着枠が増えます。さらに政府がビザ緩和などで訪日外国人観光客の誘致をすすめていることを考えると、今のままでは限界を超えるのは確実です。そのために新しく大量輸送が可能な鉄道を開通させることが期待され、JR東日本としては、逃している羽田空港からのお客さんを取り込む狙いがあります」(前出・小川さん)