「原発は廃止せよ」「いや再稼働が必要だ」──賛成論者と反対論者が二元論をぶつけあう中、ひとり正論を語り続けているのが大前研一氏だ。
元原子炉設計者であり、福島第一原発事故直後から状況を正確に分析して当時の菅直人政権にアドバイスを求められた大前氏は、東京電力の要請で原子力改革監視委員会の委員にも就いた。
日本の原子力行政を最も知る同氏は、原発推進論者ながら「今のまま再稼働すると、あの悲劇が再来する」と厳しく警告する。
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九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県)の再稼働論議が大詰めを迎えている。
川内原発1・2号機については原子力規制委員会が、「(東京電力・福島第一原発事故を教訓に強化された)新規制基準を満たす」と認め、再稼働が確実な状況になった。
今のところ認可手続きに必要な書類の提出が予定より遅れ、当初目標といわれた秋の再稼働は困難になっている。そのため8月18日には茂木敏充・経済産業相が九電の貫正義・会長と会い、「最大限の(経営)資源を投入して全力で取り組むように」と書類の提出を急ぐよう要請した。
政府は「まず再稼働ありき」で前のめりになっているわけだ。しかし、現状での再稼働は時期尚早といわざるを得ない。
福島の事故を繰り返さないため、この3年半、政府や原子力規制委員会は津波の想定高を見直すなど規制を強め、電力会社はそれに対応してきた。
改善点として「ハード面」ばかりにスポットが当たっているが、肝心な「ソフト面」、つまり「運用する組織やルール」についてはまったくといっていいほど対策が進んでいないことを多くの専門家も国民も見落としている。私の懸念はまさにその点にある。