行楽の秋を前に、日帰りや一泊程度の旅行にでかけようとプランを練るときに、路線バスの旅を選択する人が増えている。「バスジャパン」編集長の加藤佳一さんも「身近な移動手段、新たな足としての魅力が再発見されています。路線バスの旅をしていると、仕事をリタイアされた団塊の世代や若いカップルの姿をよく見かけるようになりました」と変化を感じている。
路線バスの旅は、はっきりいって効率が悪い。渋滞などで鉄道のように時間きっかりに移動できず、乗り継ぎに数十分、ときには数時間も待たねばならないこともある。自動車を運転して移動する方が小回りもききなにかと便利だと、路線バスは選択肢から外されるのが常だった。ところが、約10年前から風向きが変わってきた。
「武蔵野市のコミュニティバス『ムーバス』の成功をきっかけに、全国の自治体が次々とコミュニティバスを導入しました。地下鉄の新しい路線は、改札口が地下深いために上下に大きく移動しなければなりませんが、バスは高齢者でも利用しやすい路面交通です。そして、小さな路地のある住宅街のなかも移動してくれます。利用者から、移動の足としてバスが見直されるようになりました。
そして、2001年のバス事業への新規参入自由化をきっかけに、既存のバス会社が企業努力を重ね、バスが便利になりました。たとえば、以前は珍しかった一日乗車券が増えています。鎌倉や金沢、高山のように『小京都』と呼ばれるような観光地のほとんどで町歩きとからめたバスの一日乗車券があり、多くの観光客が利用しています。利用者から見直されたことと、バス会社の努力のタイミングがちょうど重なったといえます」(前出・加藤さん)
バス会社は、そのときどきに流行するプチ旅行にあわせた使いやすい乗車券を開発している。山ガールという名前が定着したように山登りが注目を浴びると、登山道へのアクセスがしやすい一日乗車券を販売。京急や東武のように鉄道会社も経営する場合は、往復乗車券と三浦半島や日光などの路線バスを組み合わせたフリー乗車券を発売している。