前回アル中対談に登場したグラビアアイドルの八幡愛さん。エンタメ業界で成り上がるにはどうするのか。自身のポジショニングとそこでいかに振る舞うかこそが重要だと語る。
* * *
私は子供の頃、貧乏でした。学校帰りに「アイスクリーム食べようよ!」とか友達に言われても、そのお金はないので断っていましたよ。私以外はみんなお嬢様だったので、すごいコンプレックスがありました。多分、生まれもっての環境でみんなと勝負するのは難しいと判断して、そこから私は芸能人になりたいといった方向に変えていきました。歌うことが大好きだったので、歌手を目指しました。
そのために、様々なオーディションを受けてきました。今だから分かるのですが、私って最終審査までは残るのに、最後に笑う人にはなれないんです。後でこういった事情については分かるのですが、最終候補に選ばれる人って最終的に笑う人の「賑やかし」でしかないんです。
いつも、そこそこまでは行くのですが、最後までは行けない。あの頃、『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京)でモーニング娘。の追加メンバーオーディション募集に応募したんですよね。でも、今考えると、テレビのカメラが入るから、演出の範囲として残ったのかなぁ、とも思うんです。賑やかしといいますか……。本命はいたんでしょうね……。私は当時は真剣でした。だからこそ私は収録の時にめちゃめちゃ喋っていたんですよ。
あの時主張したのは自分がどんな人間かを詳しく語ったうえで、「世界の人に云々とかじゃなくて、家族を大事にするためにお金が欲しいんです! 発信する側になりたいんです、受信とかじゃないんです!」みたいなことです。
で、もちろん、モーニング娘。になれるわけでもなく、変に少しテレビ出たせいでイジメられるし。でも、めげずに、ひたすら夢を追いかけて色んなオーディションを受けました。でも、自分の可能性に限界を感じる時が来たんです。19歳の時、ソニーから連絡があって「あなた面白いから参加して」って言われたオーディションがありました。
シード権的な感じで2次審査から参加したんですよね。読売テレビとソニーがやっていた「全国ボーカリストオーディション」ですね。HIPHOP・R&Bダンスユニットをそこからデビューさせるのが目的です。そしたら、2次審査も通過して最終候補まで残ったんです。
最終候補のメンバーには合宿とか課題発表とかレッスンとかがあって、その様子をテレビが追いかけてドキュメント番組にする形でした。その候補メンバーには、現在シンガーソングライターとして活動する清水翔太さんもいました。
彼は結局このプロジェクト自体では私と同じく選に漏れましたが、そののちのち、ソニーにすくわれてボーンとブレイクするワケです。私は彼とレッスンを一緒にしていたのに、気付いたら清水さんはデビューしていて、その時「無理やな」と限界を感じました。
清水さんも引き抜かれたから、同様の位置にいた自分も? と思わなかったかと言えばそれは無理だと分かりますよ。一人、プロデューサーみたいな人が、「君はシンガーではだめだから、オリジナル曲持って来てよ」と言われたんですね。だから、一生懸命曲作って歌詞書いてやっとできて音源を提出したら、他にないの? と言われて、自分には才能がないと思ったんです。他になかったんです。
中学1年生からずっと歌手を目指していて、19歳で才能がないと気づき、このままでは何もないまま終わってしまうと思い、20歳でグラビアをやり始めました。一度グラビアが出たら、それは一つの形になったといえましょう。音楽については最初は未練がありましたが「依頼があったらやる。私でよければ」という考えになっていきました。
で、グラビア活動を始めるわけですが、私の顔はグラビアに向いていない顔です。見て分かると思うのですが、いわゆるキッとした濃い顔なんです。グラビアの子の顔は「抜け」がなくては男の人からは受けないんです。ウケるのは丸顔、童顔なので、私には向いていないな、と思いました。だってDVDとか在庫まみれですもん(笑)
DVDを出したのでグラビアアイドルと名乗れてますが全く売れていませんよ。
結局、今、私が思うのは、私が向いているのは裏方だったのだろうな……、ということです。だって、オーディションドキュメント撮るときに、最終選考で私みたいな喋りまくる女がいたら画的にはおもしろいですよ(笑)。そういうことに気づけた今だからこそ、芸能界を目指している子たちに、私だから言えることとかを伝えていけたらなぁとか思います。
昔はすごいプライド高かったし、夢追いかけていたし、ガチガチに肩に力が入ってましたが、自分の向き不向きをわかったうえで、時の流れに身をまかせた結果、依頼があればでるし無ければ自分にできることを探しますし。なので好感度とか無視して今回だって「アル中」と堂々と言えますしね。
それにしても、グラビアの子ってすごいですよね。今グラビアの中で、トーナメント式というか、サバイバル系の企画が流行っているんですよ。雑誌の紙面争奪バトルとかなのですが、ファンの方に投票してもらって、課金制のネット放送でポイント稼ごうとするのです。やっているアイドル本人は実はすごくしんどくて、毎日「投票お願いします」とツイッターとかで頼んでいます。私も何度か参加しましたが、キツかったです。
ただ、これって、誰が得する企画なの? ってことなんですよ。グラドル達は純粋な気持ちで企画に参加するけど、応援する為にファンの人はお金使うけど、本人にあまりリターンはありません。だからグラドルって極貧生活の人が多いんです。
仕事をするにあたっては「誰が儲かってる?」を気付くのが重要ですよね。単に儲かる人の駒の一つになっているだけかもしれないのに、「お仕事ありがとうございます!」みたいな感覚を持つ人もいるんです。