ライフ

自殺は社会が解決すべき問題とする考え方 世界規模で広がる

 日本における自殺者の多さは社会全体で取り組むべき喫緊の課題である。自殺予防週間に合わせて、コラムニストのオバタカズユキ氏が、自殺について知識を深めるクイズを作った。

 * * *
 ネット上では特設サイトが設けられ、街中でも電話相談の案内入りティッシュが配られたり、講演会などのイベントが各地で開かれたりしているので、ご存知の方も少なくないと思う。9月10日から16日までの1週間は「自殺予防週間」である。

 毎年同時期に行われるこの催しは、2007年に閣議決定された「自殺総合対策大綱」において制定されたもの。2003年に、国際自殺予防学会と世界保健機構(WHO)が9日10日を「世界自殺予防デー」と定め、日本も数年遅れでそれに歩調を合わせたのだった。

 今年の自殺予防週間を迎えるにあたって、関係者の間で話題になったのは、WHOが自殺予防についてまとまった報告書を始めてリリースしたことだ。日本では国立精神・神経医療研究センターの自殺予防総合対策センターが翻訳を担当、『自殺を予防する 世界の優先課題』と題したPDF約90ページぶんを誰でも無料ダウンロードできるようにしている。

 同報告書には、世界の自殺研究の成果や自殺予防の子細な説明が網羅されており、巻末には172のWHO加盟国の「性別・年齢階級別の自殺志望者数と自殺死亡率の推定値」などのデータが付録されている。私も一通り読んでみたのだが、自殺を個人の問題ではなく社会が総力戦で解決すべき問題だとする捉え方が、世界規模でうねっている感触だ。

 ただ、自殺予防の素人の私が、ここで世界最先端の議論を紹介しても意味がないだろう。そう思い、かわりに報告書をベースとしたクイズをつくってみた。「自殺予防週間」は、自殺や自殺予防に関する正しい知識の普及や偏見の解消を目的としている。このコラムでも、みなさんにクイズを解いてもらいながら「へぇ」「なるほど」と思ってもらえれば幸いだ。

 作成したのは全10問。問題文が正しいか間違っているかを答えてほしい。間違いの場合は、どこが不正確なのか指摘もよろしく。では、ちょっとマニアックなクイズにいざ挑戦!

〇問題1:2012年の全世界の自殺死亡数は80万4千人と推定される。人口10万人当たりの自殺死亡率は11.4(男性15.0、女性8.0)。年齢に関しては、世界のほぼすべての地域で、男女ともに70歳以上の自殺率が最も高い。

●解説と正解:世界の自殺死亡数と自殺死亡率についてはその通り。年齢に関しては、日本の場合、最も自殺率が高いのは50歳から69歳の層、次いで30歳から49歳の層だ。ただ、問題文にあるように世界的には70歳以上の高齢者の自殺率が高い。よって、問題1は、正しい。

〇問題2:「自殺をする」と口にする人は、実際には自殺をしない。

●解説と正解:自殺を口にする人は、意識的か無意識にかは別として、援助や支援を求めてそう言っている場合が多い。なんらかの救いを求めてサインを送っている可能が高いのだ。よって、問題2は、間違い。

〇問題3:2012年の推定自殺死亡率で、1番高かった数値は南米のガイアナの44.2。次いで北朝鮮の38.5。3番目に高かったのは日本の28.9だった。

●解説と正解:まず、知っておきたいのは、自殺死亡率のデータは国によって質がだいぶ違うこと。1番数値の高かったガイアナは人口動態を完璧に把握しているわけではなく、かつ、総人口が70万人台の小国なので年による自殺率の変動が大きい。2番目に高かった北朝鮮の場合は、そもそも人口動態のデータ自体がなく、あくまで推定値にすぎない。つまり、安易に国別のランキング比較はできないのだ。その上で、自殺率28.9を示したのは日本ではなく韓国であることを見抜きたい。よって、問題3は、間違い。

〇問題4:自殺の危険が高い人は死ぬ決意をしている。

●解説と正解:自殺の危険が高い人でも、決意を固めた上でそれを実行する人はほとんどいない。たいていは生と死の間で心が揺れ動いている。本当は生き延びたかったとしても、衝動的に自殺で亡くなってしまうかもしれない。よって、問題4は、間違い。

〇問題5:日本の自殺死亡数は1998年に急増し、年間3万人を突破した。以降、その数は長い間増え続けたが、2009年から減少に転じ、2012年には3万人を切った。人口10万人当たりの自殺死亡率も11.5で、世界の11.4と同程度にまで下がった。

●解説と正解:理由は複雑で解明できないが、1998年に急増し、2009年から減少、2012年に3万人を切ったのはその通り。が、日本の自殺死亡率はまだまだ高く、その数値は18.5だ。主要先進国の中ではワーストクラスである。よって、問題5は、間違い。

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン