カルロス・ゴーン氏の後継者は誰か――。日産自動車のトップ人事に関しては、これまでも度々取りざたされてきた。
なにしろ14年に及ぶゴーン氏の長期政権が続いていることに加え、業績は昨年まで2期連続で予想を下方修正するなど低迷中。「もはや日産をV字回復させたゴーン氏の神通力は失せている」(国内自動車メーカー幹部)との声がもっぱら。
そして、ここにきて再びゴーン氏の去就が注目されている。というのも、腹心の外国人幹部たちが次々とライバルメーカーに引き抜かれ、ゴーン氏の求心力低下が社内外で懸念されているためだ。
昨年、ナンバー2だったカルロス・タバレス氏がプジョーシトロエングループ(仏)のCEO(最高経営責任者)に転出したのを皮切りに、今年7月には高級車ブランド「インフィニティ」部門のトップだったヨハン・ダ・ネイシン氏がGM(米)へ、そして9月にはポスト・ゴーンの最右翼と見られていたアンディー・パーマー副社長がアストンマーチン(英)のCEOになることが突如発表された。
立て続けに日産の人材が流出しているのはなぜか。業界関係者はこんな推察をする。
「ゴーン氏は昨年11月に業績低迷を受け、社内から信望も厚かった志賀俊之COO(最高執行責任者)を更迭。COO職を3人制にしたが、そのうちの一人だったパーマー氏が日産を去ったことで、社内のモチベーション低下が露呈した。
グローバル企業で人材の入れ替わりは常とはいえ、どんなに日産で頑張っても副社長止まり。最後はゴーン氏に見限られるといった風潮が幹部に蔓延しているのではないか。さすがに異常事態といえる」
ゴーン氏は資本提携先のルノー(仏)副社長で、かつて日産再建にも尽力したフィリップ・クラン氏を新たにCOOに据えたり、インフィニティのトップに元BMW(独)日本法人社長のローランド・クルーガー氏を招聘したりするなど、有能な人材固めに必死になっている。
見方によっては“後継者探し”とも取れなくないが、「すぐにゴーン氏に代わって経営全般を統括できる人材は、外国人も日本人も含めていまの日産には一人もいない」(日産関係者)というのも実情だ。
そもそも、ゴーン氏が近いうちに社長の座を禅譲するつもりがあるのかも謎だ。ここ数年、株主総会での常套句は「(進退を)決めるのは株主」。だが、日産に43.4%を出資する筆頭株主は、ゴーン氏自身がCEOを兼務するルノー。まったく説得力がない。