ドラマの視聴者層はどこまで”狙える”ものなのか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が考察した。
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木曜の夜は、21時の「同級生~人は、三度、恋をする」(TBS系)、22時の「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジ系)と、2本続けて「不倫」をテーマにしたドラマが放映されました。
中でも「昼顔」は全11話の平均視聴率が13.9%と予想以上の好評を博し、今季民放ドラマで2位に。特に、最終回の描き方には肯定派・否定派がまっ二つに分かれて、議論に発展。それほど注目されたドラマだった、ということでしょう。
「不倫する女」。これまでは、どちらかというと家庭の破壊者として主婦たちに反発されてきた。しかし、今回は違ったのです。関心・視聴率の高さ。その人気は女たち・主婦たちに支えられていた。女性セブンの取材によると、8割以上の人が「夫がいないときにひとりでドキドキ感を味わいながら見ています」。「不倫」ドラマが、新しい局面に入ったのかもしれません。
「昼顔」の登場人物は、パート主婦の笹本紗和(上戸彩)。恋をする相手は高校教師の北野裕一郎(斉藤工)。そして紗和の夫・俊介(鈴木浩介)は、スキンケアに熱心な究極のナルシスト。子どももいないのに妻を「ママ」と呼ぶなど諸処問題あり。「子どもはまだなの」と小うるさく干渉してくる姑……。
だからこそ、「紗和が不倫に走ってしまうのにはそれなりの理由がある」--女性視聴者たちはそう納得したのでしょう。
「不倫は悪いことだけど、人を好きになる気持ちは誰にも止められない」「実際に不倫しなくても、女ならドキドキしたい気持ちがある」といったあたりが、女性視聴者たちの共通の思いだったのでは。
対して、あまり興味を示さなかった男性たち。このドラマのどこが面白いのか今ひとつわからない、という意見も聞かれました。中には、「夫たちを悪者に描きすぎ」とご立腹の方も。 つまり、このドラマが勝利した秘訣とは、徹底して「女の共感」にフォーカスしそこに力を絞った点にあるのでしょう。
一方、「昼顔」とは対照的に、男性の支持ぶりが際立つ話題のドラマがあります。広末涼子主演の「聖女」(火曜夜10時NHK)。初回から主人公・基子の濃厚なラブシーンが「見せ場をつくった」と話題沸騰。
「広末は白いスリップから肌をあらわにし、濃厚なキスシーンから、教え子が彼女に覆いかぶさる時の広末の官能的な表情がエロくて良かった…清純派のイメージが強いあの広末がここまでするのかと感慨無量です」と放送担当記者(週刊文春2014.10.2)。感無量という口調からしてこの関係者はおそらく男性。それ以外にも広末さんの官能的な姿を喜ぶ声があちこちで聞かれます。
「聖女」は一応、ラブサスペンス仕立て。基子は連続殺人を犯した容疑者として法廷に立つ。その筋立てはさて置き、このドラマの作り方にはある特徴が。
広末さんが演じる基子を、聖女聖女と、くどいまでに強調。「美しい人」「穢れのない女性」と持ち上げっぱなし。そしてカメラはやたらにアップ。口もと、胸元を写し出す。基子の台詞は「みなさんが私を必要だと」。ドラマの役柄を超えて、不自然さを感じるほどカリスマ的な女性に描かれる。