若い世代が「内向き志向」だなんて、なんの証拠があって言っているのか。留学率は増えているのだ。そりゃ、若いうちに世界を知っておいて損はない。留学必須の学部が新しくできたり、授業内公用語が英語という科目があったり、海外からの留学生や外国人教員とディスカッションするのもいい。いいのだけれども、その手の学びには金がかかる。
方々の大学で名前の頭に「国際」や「グローバル」がついた学部・学科が増えているが、それらのたいていは従来の文系学部よりも授業料がぐんと高い(例:早稲田大学国際教養学部115万8000円、同大学商学部77万2000円/2014年度)。各大学ともさまざまな留学プログラムを用意しており、そのための別費用も相当額にのぼる。ざっくり言って、お金持ちの家の子でないと進学先として選びにくい。
だが、そうした教育体制が整っていて、さらに国際志向を強化させようという大学を国が選び、「スーパーグローバル大学」として支援することにした。旧帝大や筑波大、東京医科歯科大などの国立大と早慶の計13校を、世界の大学ランキングトップ100入りを目指す「トップ型」に選定、そこまではいかない大学24校を「グローバル化牽引型」とした。
「トップ型」に選ばれた各大学は国から年に4.2億円、「牽引型」は年に1.7億円の財政支援を10年間受ける。その実入りも嬉しいだろうが、この事業対象大学として採択されたメリットで大きいのは、国から正式に「スーパーグローバル大学」と認められたことだ。
「トップ型」はもともと人気の難関校ばかりだが、「牽引型」には国公立だと長岡技術科学大学や会津大学など、私立だと東洋大学や創価大学など、誤解を恐れずにいえば意外な大学名がけっこう混じっている。そうした大学がこれから「スーパーグローバル大学」と名乗れることは、ものすごく強力な広告・宣伝材料になる。
だから、「トップ型」には16校、「牽引型」には93校もの申請が殺到し、選定されるために膨大な書類が届けられた。お墨付き大学になるべく、多くの大学がお上の意に沿った大学改革の方針も立ててきた。そのエネルギーの総量はいったいどれぐらいのものだったろう、と想像する。そして、それに投じたエネルギーを中退防止対策に向けていたならばどれだけの学生を大学に引き留めることができただろう、と思う。
立て続けに流れた2つの大学ニュース。それぞれ別個の話題だが、私には「格差」がさらに拡大する流れとしてセットで見えてしまうのだ。スーパーなんちゃらの余裕があるなら、貸与型ではなく給付型奨学金制度を作れ、保護者の所得と連動させた授業料免除制度を作れ、と言ったら野暮だろうか。少なくとも、5年ぶりとかじゃなくて、大学中退者の実態調査ぐらい毎年きちんとサクサクやれ、と言わせてもらってもいいのではないだろうか。