9月27日、長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)が噴火し、登山客ら51人が死亡した(10月5日現在)。
今回の噴火で、国民をあ然とさせたのは気象庁の諮問機関である火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣・会長(東京大学名誉教授)の「予知に失敗したというかもしれないが、ある意味では仕方のない状態。われわれの火山噴火予知に関するレベルというのはまだそんなもの」という発言だった。
しかし、火山と地震を合わせた研究関連予算は年間約217億円(2013年度)にのぼり、この20年間の総額は4000億円を超えるにもかかわらずだ。
地震学者のロバート・ゲラー東京大学大学院理学系研究科教授は、藤井氏の発言は本音だと指摘する。
「火山噴火予知連絡会という名前の組織があるから、国民は『噴火は予知できる』と考えているかもしれませんが、噴火予知の精度は非常に低い。予知連の学者たちは実はこれまでもこっそりと『必ずしも予知できるわけではないと考えてくれ』といっていましたが、看板には堂々と予知を掲げてきました。『できるフリを続けてきた』といわれても仕方がないでしょう」
そうやって気象庁や委員の研究者が「予知」の名称にこだわるのは、予算獲得のためだという。
「例えば東大地震研究所の中には、火山噴火予知研究センターと地震予知研究センターという組織がある。予知という名前をつければ、期待が集まるから予算を取りやすいわけです。別の研究を予知研究と偽って研究費をもらうケースもある。今回のような噴火が起きなければバレませんからね。だからといって予知連と堂々と名乗っていいのかというと、モラルの問題だと思う」(ゲラー教授)
予算獲得のための「噴火予知」というおとり広告に国民はすっかり騙されていたことになる。