大都市圏の地価上昇傾向、過去最低水準の住宅ローン金利など、マイホームを持つには今が絶好の“買い時”とも思えるが、購入まで踏み切る人はそう多くない。
住宅金融支援機構が9月にまとめた『平成26年度下半期における住宅市場動向』でも、「これから半年以内が住宅の買い時」と答えた消費者が72.3%いて、「買い時だと思わない」の27.7%を大きく上回った。
それほど購入意欲は旺盛にもかかわらず、実際の住宅販売は低迷している。例えば、不動産経済研究所が調査した8月の首都圏マンション供給戸数は前年同月比で半減するなど振るわない。契約率も19か月ぶりに7割を下回った。
また、中古マンションもここ半年ほど成約件数が前年比でマイナスが続いている状況だ。
モデルルームなどを訪れる住宅の取得予定者でさえ、二の足を踏む理由とはなにか。住宅評論家の山下和之氏が話す。
「もっとも大きな要因は消費税の再引き上げです。増税が予定通りに実施されれば、その後も順調に景気が拡大するとは限りませんし、住宅価格や金利の動向も不透明になります。
金利は昨年から今年初めにかけて先高観が払拭され、当面は現在のような低水準が続きそうなので、焦る必要はないと様子見に入っている消費者が多いのでしょう」
だが、物件価格や金利が上昇するタイミングで物色し出すのでは遅い。山下氏が続ける。
「マンションの販売不振に喘ぐ中堅の不動産会社は焦燥感を強めていますので、再増税前のいまなら値引き交渉に応じてくれる可能性が高い。また、落ち込みが深刻な注文住宅では、太陽光発電をつけることで実質的に住宅ローンの負担が軽くなるといった戦略を打ち出しているメーカーもあるので、掘り出し物が見つかるチャンスともいえます。
ローン金利については建物が完成して融資の実行を受ける日の金利が適用されるので、メガマンションのように完成が2年先、3年先といった物件には金利面のリスクが大きい。それを回避するためには、超低金利のうちに長期固定型などの住宅ローンを確定しておいたほうが安心です」
それらを考え合わせると、「半年から1年程度の間に物件を絞り込んで、決断するのがベスト」(山下氏)だという。