野球の試合開始前に行う始球式は、単なる儀式というより立派なパフォーマンスショーとなった。始球式を巡るアレコレについて、フリーライターの神田憲行氏が語る。
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ネット動画の「あの○○ちゃんが驚愕のノーバン始球式!」というリンクをクリックして、ダイレクトに捕手にボールを投げてマウンドでぴょんぴょん跳ねている女性タレントの映像に気まずい思いをしたことがあるのは、私だけではあるまい。ダイレクト投球の「ノーバン(ノーバウンドの意)」をパンツ履いてない「ノーパン」に空目したわけですね。
パンツを履かない始球式はいまだかつて登場していないが(たぶん)、たんなる儀式を越えて、いまや始球式は試合前のエンターテイメントとして定着した観がある。最近でもタレントの柳沢慎吾さんの「ひとり甲子園」というネタ始球式が話題になったし、7月には金田正一さんが投げて長嶋茂雄さんがバッターボックスに入った始球式は翌日のスポーツ紙の一面トップにもなった。
なぜこんなに話題になる始球式が多いのか。パリーグのある球団の元営業マンはこういう。
「話題になるというより、話題になりそうな人を呼んでるからです。始球式はいまやプロ野球の試合のキラーコンテンツ的な存在で、映画やドラマのプロモーションによく活用されます」
たとえば映画の封切りや新作ドラマの開始に合わせて、主演クラスの女優・女性タレントにそれなりにセクシーな格好で始球式をさせる。絵になるので翌日のスポーツ新聞やスポーツニュースに取り上げられたり、ネット動画で閲覧される確率が高い。球団も映画・ドラマの制作側も認知度が上がって両方バンザイ、というわけである。これはらはバーターということで球団は出演料を払うことなく、映画・ドラマ側も宣伝費を払うことがない。
複数の球団関係者に「記憶に残る始球式」を訊ねると、
「吉木りさの半ケツ始球式は良かった(笑)。ロッテの選手がもうニヤニヤしてて」
「秋田での壇密のスクール水着始球式。ヤクルトさんなんですが、いつも始球式のセンスがいい」
「古い話ですが、磯山さやかさんのミニスカ始球式。しかも投手でなく捕手をやったんですよ。元野球部マネージャーでむっちりグラビアアイドルですから、野球ファンにはたまらんかったです」
韓国でもセクシー始球式は盛んで、新体操選手のアクロバチック投法や最近でも生足・半ケツ始球式が話題になった。というか私は欠かさず見ています。
逆に仕込みにエッジが効き過ぎて、客席がポカーンとしたことも。
「松居一代が来たときは例の自分が作ったナントカ棒振り回してわけわからんことに」
「吉田類さんが登場したときは、お客さんが『誰やこのオッサン』みたいな雰囲気になってしまって……」
たしかに「酒場放浪記」のファンはナイターの時間は飲んでいるかもしれない。