先の通常国会で継続審議となった、カジノ合法化を含む「IR(統合型リゾート)推進法案」(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)が、秋の臨時国会で成立する可能性が高まっている。
その一方、カジノ誘致の先陣を切ってきた東京都は、お台場のカジノ用地とされた都有地を貸し出し、カジノ誘致を担当する「大都市行政担当」を知事直轄部局から港湾局に移管する事実上の“格下げ”をし、慎重姿勢に転じたたことで、カジノの是非をめぐる論議が再燃している。だが、10年前からカジノ誘致を研究してきた大前研一氏はそれらの論議は、すべて「的外れ」と喝破する。
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日本人の多くは、カジノに対して、モナコのモンテカルロのような「紳士と淑女の社交場」を想起しがちだ。しかし、それはほんのごく一部のカジノであって、日本が招致モデルの参考としている、マカオやシンガポールなどのアジアのカジノの実態はまるで違う。
マカオとシンガポールのカジノには、すこぶる特殊な事情がある。だが、それについて説明する前に、マカオのカジノが世界一になった背景を知る必要があるだろう。
カジノ売上額(2013年)は、1位がマカオ(452億ドル)、2位がラスベガス(65億ドル)、3位がシンガポール(61億ドル)である。中国本土からの観光客が6割以上を占めるマカオのカジノは中国経済のバブルに比例するように急成長し、今や売上額でラスベガスの7倍に達している。
とはいえ、VIPルームにやってくる中国の富裕層は、遊戯目的でカジノにカネを注ぎ込んでいるわけではない。彼らにとってカジノは“マネーロンダリング(資金洗浄)マシーン”の役割を担っているのである。