続々とスタートした秋ドラマ。今期の見所について、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が言及した。
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秋ドラマに登場する女たちを見回してみて、まずは3人の女優に注目したい。
筆頭は、石原さとみ。「ディア・シスター」(フジテレビ系木曜午後10時)で、まったく逆の性格を持つ姉妹の、妹役・深沢美咲を演じています。姉妹がぶつかり合い、支えあって生き抜く姿を描くコメディタッチのドラマ。「アナ雪」ブームに乗った姉妹ドラマ、と紹介してしまえば軽いけれど、ドラマに登場する人物は妙に現代をリアルに掴んでいて面白い。
石原さとみが演じるのは、はじけたキャラ。自由奔放、やりたい放題。自分の行き方を変えるつもりはない。その突っ走りスタイルが社会や家族や周囲との摩擦を生み……けれど、意外に他人のことも見えているタイプ。
一方、姉・深沢葉月を演じているのは、松下奈緒。こちらは典型的なA型的女子。何事も計画。自分の描いた図の中に収まらないと納得できない。人のことを思いやる気持ちは十分あるけれど、同じくらい、自分の中の規範意識が強い。きっちりしすぎて周囲との軋轢が生まれて、自己崩壊気味……。
石原さとみと松下奈緒、二人の女優。ともにそれぞれ違うキャラクターのポイントをよくグリップしつつ、細かく丁寧に、のびのびと対照的な姉妹を演じきっています。特に姉のタイプ、真面目な日本人によく見られるパターンです。
働くことが普通になった女子たちにとって、「仕事をきちんとやる」ことと、「自分の人生を自由に生きること」との折り合いは、なかなか難しい。考えすぎれば他人への不寛容や恋愛の不成立、おひとりさま増殖へとつながっていく……。姉妹のキャラクターはディフォルメされているにせよ、どちらも現代に生きる私たち自身の姿を映し出す「鏡」になっている。
思えば、人は自分のことや自分自身の人生を考える時、何も手かがりがなくては、なかなかうまく考えられない。参照する対象が必要なのです。
いったい自分はどんなキャラクターで、どんなパターンにはまりやすいのか。どんな人生を生きたいのか。すこし離れて観察し、道を探る手かがりになる。そんな風に視聴すると、ドラマはますます面白くなる。
そしてもう一人、注目すべき女優が、「今日は会社休みます。」(日本テレビ系水曜午後10時)で主役・青石花笑を演じている、綾瀬はるか。こちらも上手に「こじらせ女子」のキャラクターを演じています。
花笑は、彼氏いない歴33年&処女歴33年。頭の中は合理的で論理的。想像で組み立てた話が現実を浸食していく、ありがちな「こじらせ女子」の空転ぶり。綾瀬はるかが真面目に演技すればするほど、くっきりと浮き上がるリアルとコミカル。笑わされた後に、うーんと考えさせられてしまう。やはり、ドラマは現実の鏡かも。