政治資金収支報告書に数々の疑惑が浮上し大臣を辞職した小渕優子・前経産相。小渕疑惑の核心は後援会女性部の格安観劇ツアーの収支だ。関連政治団体の政治資金収支報告書によると、2010年と2011年に開催された「明治座」観劇ツアーの収入は合わせて約742万円だったのに対して、明治座などへの支払い総額は3384万円にのぼっている。2012年は収支報告書に記載がないものの観劇ツアーは開かれていたことを小渕氏自身が認めている。
政治資金オンブズマン代表で、神戸学院大学法科大学院の上脇博之教授の指摘。
「報告書の通りであれば、参加者は安い料金で高い芝居を見られたことになる。参加者が選挙区の有権者であれば公選法が禁じている『違法な寄付』に当たる。2012年の観劇は総選挙前だけに、誰かが参加者に“選挙は小渕をよろしく”と依頼していればより重い『買収』に問われる可能性があります」
公選法では違法な寄付をした者は「一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金」、買収は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」と定めている。
秘書や出納責任者が買収で有罪判決を受けた場合、小渕氏自身にも連座制(※注1)が適用されて議席を失う。
【※注1】選挙違反を犯した人の立場と量刑によって、候補者の当選が無効になる制度。総括主宰者や出納責任者などが執行猶予含む罰金刑以上になった場合、もしくは親族や秘書が執行猶予含む禁錮刑以上になった場合、候補者の当選が無効になる。
それだけに小渕氏は辞任会見で「全員が1万2000円を払って参加している」と格安ツアーだったことを懸命に否定し、参加費総収入は2400万円になることを認めた。
だとすれば、新たな疑惑が浮上する。小渕後援会は参加者から2400万円を集めながら、報告書には収入を約742万円しか計上していない。差額1600万円以上は「裏金」になった疑いが出てくるのだ。
これは政治資金規正法の「虚偽記載」にあたり、「五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金」に処せられる。