最終消費者向けの商品を出荷する中小企業や小売業も、消費が上向いてこないから値上げに慎重にならざるを得ない。岩手県花巻市にある味醂・醤油の製造元、佐々長醸造も大豆の値上がりを価格転嫁できずにいる。
「大豆の6割が外国産ですから、1年前に比べて20%以上も仕入れ値が上がった。国内産も九州地方の大雨の影響で不作のため、去年に比べて15%ほど高い。でも、醤油や味醂などの生活品は簡単に値上げできないから、差損はうちで吸収するしかないと考えています」(佐々木博・社長)
同じ岩手県内のある酒販店も輸入酒の仕入価格が5%ほど上昇したが、打開策がないと途方に暮れる。
「電気代や配送でかかるガソリンなどの燃料費も高騰している。昨年の秋冬から一部は価格転嫁しているが、すると今度は売り上げがガクンと落ちて商売にならない。一体どうすればいいのか」(店主)
前出・須田氏はいう。
「ある地方の弁当屋では、50円の値上げを納入先の工場に申し入れただけで、あっさり取引を打ち切られた。赤字覚悟で売り上げを維持するのか、値上げを持ち出して取引を切られるか。どちらに転んでも地獄ですよ」
※週刊ポスト2014年11月7日号