安倍政権の「政治とカネ」追及は、そのほとんどが週刊誌の報道に端を発している。新聞・テレビの取材記者のほうが圧倒的に多いのに、なぜ週刊誌ばかりがスクープするのか。
理由は「大メディアの記者が無能だから」だけではない。彼らは「スキャンダルを書きたくない」のである。「政治とカネ」の最大の恥部は政治権力と大メディアの癒着構造にある。
10月10日19時15分。東京・赤坂にある高級中華料理店『赤坂飯店』の個室。内閣記者会(記者クラブ)に加盟する新聞・テレビ各社の官邸キャップが一堂に会した。安倍首相を囲む「オフレコ懇談会(オフ懇)」だ。お開きとなる21時頃まで安倍首相は意気揚々と政権の成果を演説し、記者たちは豪勢な夕食に舌鼓を打ちながら拝聴した。
複数の関係者の話をもとに、その一端を紹介する。
記者:「今後の経済動向は?」
安倍:「アベノミクスが効いて、株価はこれから上がっていくよ」
実質賃金は14か月連続で低下し、円安で物価も上昇、国民生活は逼迫しているのに、それを突っ込む記者はいない。
記者:「臨時国会では女性活用が目玉になっています」
安倍:「政権の看板の1つでもあるからね。内閣改造で5人の女性を入閣させたし、これを契機に女性が社会で活躍できる道が開ければいいと思っているよ」
記者:「(松島みどり)法相のうちわ問題の対応は考えていらっしゃいますか」
安倍:「彼女には“今後は注意するように”とちゃんといってあるから大丈夫だよ」
従順な大メディア記者に囲まれて余裕綽々(しゃくしゃく)で受け答えする安倍氏だったが、その直後に『週刊新潮』の報道で小渕優子氏のスキャンダルが発覚。安倍首相がちゃんといった甲斐はなく、松島氏も辞任した。目玉の女性閣僚2人が就任からわずか1か月半で消えた。