今年の日本シリーズは史上初めて「守備妨害」という決着の付き方だった。そのあっけなさに、阪神ファンならずとも戸惑った人も多いだろう。だが人生には「あっけない」ことは十分起こりうる。そんなとき、大人としてどう対処すべきなのか。大人力コラムニスト石原壮一郎氏が提案する。
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今年のソフトバンク対阪神の日本シリーズは、じつにあっけない幕切れでした。ソフトバンク3勝1敗で迎えた第5戦。ソフトバンクが勝てば、日本一が決まるという試合です。
細かい説明は端折りますが、キャッチャーの一塁への送球が、打った西岡の腕に当たってあさっての方向に転がり、その間にランナーが生還して同点……かと思いきや、守備妨害の判定でアウト。そのままゲームセットで、ソフトバンクの優勝が決まりました。
当然、阪神の和田監督は審判に猛抗議。その横で、ソフトバンクのナインが大喜びするという珍しい光景が繰り広げられました。ちなみに、妨害行為がからんで試合が終了したのは、日本シリーズ通算388試合目で初めてだとか。阪神ファンにとってはなんともやるせないし、ソフトバンクファンも盛り上がるタイミングをつかみ損ねた感がありました。
日本シリーズほど全国的な注目は浴びないにせよ、仕事でもプライベートでも「あっけない幕切れ」に遭遇する場面はあります。
新しいプロジェクトが形になる直前に根本的な問題点が見つかってすべてがパーになったり、他社との提携話を進めていたら相手先の責任者が失脚して白紙に戻ったり……。あるいは、名物メニューを食べに遠くの飲み屋さんに何人かで繰り出したら「今日は売り切れました」と言われたり、うまくいっていると思っていた恋人から「ほかに好きな人ができたから」と唐突に別れを切り出されたり……。
そんな「あっけない幕切れ」に対して、大人としてはどんな悔しがり方をすればいいのか。
日本シリーズを例に考えてみると、いつまでも「あの判定はおかしい」「後味が悪い終わり方だ」と文句を言い続けるのは、あまり美しくありません。「あんな珍しい負け方をしてくれるなんて、さすが阪神!」と強引に持ち上げたり、「あの場面で即座に守備妨害と判定できるなんて、勇気あるよね」と審判を称えたりしたほうが、粋な大人に見えます。