厚労省研究班の調査では、2012年時点で65歳以上の高齢者約3200万人のうち、認知症患者数は約462万人に達する。さらに認知症の前駆段階である軽度認知障害(MCI)の高齢者は約400万人と推計され、65歳以上の4人に1人が認知症に向き合っていることになる。
認知症には「アルツハイマー型」、「脳血管障害型」、「レビー小体型」、「前頭側頭型」の4つのタイプがあるが、国内で全体の約6割を占めるのがアルツハイマー型だ。アルツハイマー型認知症の患者数は1999年には3万人ほどだったが、2011年には36万6000人と約12倍に急増している。
年代別の発症率を見ると、65~69歳の有病率は1%だが、80歳で20~25%、95歳以上になると40~50%に増加する。患者の増加は長寿化、高齢化と密接な関係にあることがわかる。
原因究明は道半ばだが、どんな人がアルツハイマー型認知症になりやすいかは、疫学調査によって徐々に明らかになっている。世の中には、「ボケになりにくい食事」「ボケになりにくいトレーニング」などの情報が溢れているが、医学的に証明されていることはごくわずかだ。
アルツハイマー型認知症発症の大きな危険因子とみられているのが「遺伝」と「生活習慣」の2つだ。
2002年に開始されたコロンビア大学医学部のリチャード博士主導の研究では、アルツハイマー型認知症の罹患者が家族に2人以上いる家族を募集した。集まった396家族・943人を長期間にわたり調べたところ、一般の集団と比較して3倍以上の発症率が認められた。
1992年、米デューク大学の研究チームによって、発症に関与していると突き止められたのが「アポE4」と呼ばれる遺伝子だ。