【著者に訊け】山野良一氏/『子どもに貧困を押しつける国・日本』/光文社新書/820円+税
前作『子どもの最貧国・日本』(2008年)を上梓した際、千葉明徳短期大学教授・山野良一氏はよくこんな指摘を耳にしたという。〈日本の子どもが貧困化? そんなの聞いたことありません〉──。しかし状況はさらに悪化。例えば厚労省が今年発表した「子どもの相対的貧困率」(調査は2012年)は16.3%と、過去最悪を記録したという。
「今回は現政権が強く反対していた子ども手当(2010年~)の後だからこの程度で済んだので、単に景気が回復すれば率が改善する構図にないことが、子どもの貧困の最大の問題なんです」
最新刊『子どもに貧困を押しつける国・日本』では、〈社会的に「見えにくい」〉子どもの貧困の実相や構造をまずはわかりやすく解説。その上で、実はアメリカに次ぐ貧困大国・日本において、単なる精神論や数字的改善を超えた“質の改善”をめざす方法を模索する。実感は薄いかもしれない。が、戦後の貧困とは全く性質が異なる静かな絶望が我が国には蔓延しているのだ。
著者は元神奈川県庁職員。児童相談所などで一貫して福祉畑に携わり、現在は4年前に湯浅誠氏も立ち上げを後押しした「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークで世話人を務める。
「事態が改善しない理由の一つはわかりにくさにあると思うんです。例えば直近の16%という数字にしても、日本では〈豊かさゆえに〉貧困の基準が高すぎるのでは、との勘違いが見られる。そこで本書では具体的な金額や人数を例示し、講演等でよく出る素朴な質問も適宜挟みながら、わかりやすい本にしたつもりです」
相対的貧困率とは、国ごとに算出した〈貧困ライン〉未満の所得で暮らす子どもの割合を示し、ユニセフ等で採用される国際的指標だ。ポイントはその算定基準が全体の平均ではなく〈中央値〉にある点で、各世帯の所得を順に並べた時、上から数えても下から数えても真ん中の家の可処分所得の50%が、貧困ラインとなる。