バブル最末期、たったひとりで第一勧業銀行(現在は統合してみずほ銀行)を中心とする金融界から100億円以上の不正融資を引き出した「伝説の総会屋」小池隆一氏。
小池氏は1997年、戦後最大規模の金融スキャンダル「総会屋利益供与事件」(※注1)で逮捕された。
たったひとりの総会屋が第一勧業銀行や四大証券(野村、大和、山一、日興)から100億円を超える不正な無担保融資を引き出し、経営陣を中心に各社から32人もの逮捕者を出した。
事件に関わった第一勧銀の宮崎邦次・元頭取(当時)が自殺したことが事件の闇の深さを物語り、社会を震撼させた。
総会屋はいまや絶滅したに等しい。だが、1982年の商法改正で企業による総会屋への利益供与が禁止される前、日本の株主総会は彼らが仕切っていた。総会を荒らされたくない企業は不祥事を追及してがなりたてる総会屋を抑えるために「賛助金」を提供してきた。
小池氏は商法改正後、総会屋が「反社会的勢力」になった後も活動を続け、一大スキャンダルを引き起こした当事者である。小池氏が自身の総会屋としてのキャリアを語るのは、今回のインタビューが初めてだ。
「商法改正や私の事件の際、世間では“総会屋にカネを渡す企業”が批判を浴びました。たしかに総会屋はあらゆる業界の企業を追及しますが、行き着くところ、相対するのは『銀行』です。
トヨタのような特殊なコングロマリットは例外ですが、基本的にこの国にはメーンバンクを持たない企業は存在しません。誰もが名を知る大企業になれば、地方銀行ではなく、ごく少数のメガバンクがメーンとなる。メガバンクのあずかり知らぬところで各企業が勝手に総会屋にカネを渡すことがありえるでしょうか。