日朝協議で日本人拉致被害者らの再調査を両政府が合意してから半年が経った。しかし北朝鮮による拉致調査はいまだにゼロ回答。その一方で北朝鮮に対する一部制裁解除が行なわれたばかりか、日本人遺骨の発掘・改葬費用として「遺骨1柱あたり200万円」という金額が取り沙汰されている。北朝鮮での日本人戦没者は約3万4600人で、うち未帰還遺骨は約2万1600柱にのぼり、単純計算で約400億円もの収入を見込めるというのだ。
そして安倍政権の北朝鮮に対する最大の「貢ぎ物」は、朝鮮総連本部ビルをめぐる特別な配慮だ。
バブル崩壊以降、次々に破綻した朝銀信用組合の不良債権回収に乗り出したRCC(整理回収機構)は、事実上の融資先であった総連に返済を求め、資産である総連ビルを競売にかけた。1度目の入札が行なわれたのは2013年3月。この時は鹿児島の宗教団体が落札したが、資金調達がうまくいかず断念。2度目の入札ではモンゴル企業が落札したが、書類の不備で失格。次点の四国の不動産投資会社「マルナカホールディングス(HD)」が落札者となった。
ところが、この決定に総連と北朝鮮本国が猛反発を見せる。
総連側はすぐ東京高裁に抗告を申し立て、宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使も4月、「不当な判決について強い憂慮を表明する。この問題の解決なしに朝日関係の進展の必要はない」と強い口調で日本側を牽制した。宋大使は5月末の日朝協議の際も、合意内容に総連ビルの保全が「含まれる」と発言した。
本誌7月4日号でスクープした「京都駅近くの約3300坪の土地を売却した資金で総連ビルの継続使用を図る計画」はそうした状況の中で日本側も合意して進められた「総連救済策」だった。本誌が報じたために計画は流れたが、官邸中枢が北朝鮮に配慮して計画を進めた痕跡が関係者の証言から浮かび上がった。