消費増税先送りと解散総選挙が決まった。私が予想した通りの展開だ。
そもそも消費増税は民主党の野田佳彦政権と自民党、公明党による3党合意で決まった。それを合意に加わった自民党の安倍晋三政権がひっくり返すというのだから、あらためて選挙で民意を問うのは、政治的にまったく正統性のある手続きである。
3党合意の増税路線に賛成して自民党に投票した有権者からみれば、安倍政権ができたと思ったら突然、公約を反故にして増税先送りでは納得がいかないだろう。
ところが、一部のマスコミは「増税を決めた法律には景気次第で増税を停止できる景気条項があるのだから、解散しなくとも政権が決めればいい。税金の無駄遣いだ」と解散を批判している。
私に言わせると、こういう批判は政治のリアリズムとダイナミズムを理解していない。解散なしで増税先送りを決めようとすると、何が起きるかを考えればすぐ分かる。
自民党の税制調査会を牛耳るベテランたちは増税断行を強硬に唱えていた。野田毅税調会長は言うに及ばず、麻生太郎財務相や谷垣禎一幹事長も増税派である。
民主党はもともと増税に賛成だ。舞台裏では財務省があの手この手で増税根回しに動いていた。そこで安倍首相が先送りを言い出せば、政権を揺るがす大政局になったのは間違いない。
大手マスコミはほとんど増税賛成だから結局、安倍は先送り断念に追い込まれただろう。そうなったら政権の求心力は低下する一方、景気は悪化するので最終的に政権が崩壊してもおかしくない。
それどころか、増税せざるをえなくなった安倍政権は財務省にとって、もはや用済みである。「総理、ご苦労さまでした」の一言で安倍は谷垣や麻生に交代する。実は、これが財務省にとってベストシナリオだった。
つまり「景気条項があるから、先送りしたいならできるじゃないか」という議論は一見、もっともらしいが、裏に秘めた真の思惑は「安倍政権、さようなら」なのだ。