韓国のサムスングループで大掛かりなリストラが始まっている模様だ。
創業者一族の2代目、李健熙(イ・ゴンヒ)・サムスン電子会長が今年5月に重篤な心筋梗塞で倒れて以降、経営の舵取りは長男の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に託されてきたが、跡目の手腕を疑問視する向きもあった。
「信賞必罰を徹底し、『妻と子以外はすべてを変えよ』と強烈なトップダウン経営でサムスンを20兆円企業に押し上げた健熙氏に対し、在鎔氏は典型的な“ボンボン”タイプ。
早くから帝王学を学び、2010年にサムスン電子の副社長から社長に昇進した時点でグループ後継者の地位は確定していたが、性格的には謙虚で物腰も柔らかいため、関連企業70社以上、従業員約40万人の巨大帝国を束ねられる器ではないと見られてきた」(韓国在住ジャーナリスト)
だが、3代目への権限移譲は着々と進んでいる。韓国・東亜日報が伝えたところによると、健熙氏が保有していたサムスン電子やサムスン生命保険といった中核企業の株式を在鎔氏が引き継ぐことで、グループ統治を加速させていく狙いがあるという。
また、膨れ上がった組織の再編にも乗り出している。昨年には株の持ち合いをしていたグループ会社を整理。健熙氏の長女や次女が仕切っていたレジャー系、ファッション系企業の責任分担を明確にしたのに続き、直近の11月26日には化学など系列4社の売却も発表した。
「これで在鎔氏はサムスン事業の要である電子、金融分野に集中でき、グループ全体を指揮できる体制固めができた」(前出・ジャーナリスト)というわけだが、残るは経営トップとしての求心力をいかに高められるかだ。
なにしろ最近の業績は“サムスンショック”と呼ばれるほど低迷している。7月に発表した2014年第2四半期(4~6月)の決算は、9年ぶりとなる減収減益に沈んだ。大きな要因は、連結売上高の約6割を占めるスマホ事業の不振。今年4月に発売したサムスンの看板商品のニューモデル「GALAXY S5」も思ったように売れず、米アップルと争ったかつての勢いはみられない。
「もはやスマホやタブレットの完成品に頼った経営を続けるのは難しい」と指摘するのは、信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏だ。
「米国など先進国ではスマホ市場の成熟化で買い替え需要しか見込めません。そうかといって中国をはじめとする新興国では、小米科技(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)など現地メーカーに低価格スマホを武器にシェアを奪われている。
サムスンがコモディティ化したスマホ事業で生き残るためには、ICチップやNAND型フラッシュメモリなどの半導体や液晶といった部品供給に特化した道も模索しなければならないでしょう。既存技術だけでなく、自ら新しいモノも生み出していかなければ今後の成長はありません」(真壁氏)