今なら勝てる。大義も小義も関係ない。そんな首相と与党の都合で解散される議会を、「国権の最高機関」と呼べるだろうか。野党も同罪だ。「いきなりの解散はズルい」と泣き言を繰り返すばかりで、安倍政権によって生活基盤を打ち砕かれた有権者の声を、耳を澄まして受け止めようという姿勢は見えない。
過去20年以上、時として与党に、時として野党に身を置き、日本政治の舞台回しを担った男は嘆く。「このままでは議会政治は死ぬ」。続けて言う。「このままでは日本の再生は遠のく」と。小沢一郎の最後の呼びかけに、果たして答えはあるのか──。ジャーナリストの武冨薫氏が小沢氏にインタビューした。
小沢:僕は今回の政局でも、誰かが既成政党の枠から飛び出して「この指とまれ」と言ったら、大同団結、統一戦線ができたと思うね。そうしたら、絶対に政権交代だった。だって今、安倍政権に対して「これでいい」と思っている人は少ない。「代わりになる受け皿がないから、今のままでもしょうがない」っていう話ですよ。これは日本人的あきらめだと思う。
──自民党は「経済は民主党時代より良くなった」と力説してきた。
小沢:アベノミクスは最初から実体のない、言葉だけがもてはやされている政策にすぎない。景気対策は公共投資と金融政策だとよくいわれますけど、今はそういう状況ではない。この間も第2弾の金融緩和で日銀が国債をどんどん買い入れるという戦時国債みたいなことをやっている。
お金をどんどん印刷して国民に回ればいいけれども、現実は金融機関や大企業でダブついて、株は上がったけれども円が安くなった。それで空前の利益をあげているのはごく一部の大企業だけでしょう。その企業の正社員にはボーナスの恩恵が多少あったようだけれども、それでも実質賃金は下がっている。庶民の防衛策は財布の紐を締める以外ない。だから個人消費が減る。
単にトンカチで何かをつくれば建設業界は かるけれど、そうした国家的事業は大手の建設会社が請け負うから、利益は全部東京に還元されちゃう。地方に落ちる金はほとんどなくて、地域間格差はどんどん拡大している。では、大企業が儲かれば東京の人に分配されるかといえば、大都市でも正規と非正規の収入の格差は広がる一方です。