「就任から2年弱で50カ国を駆け抜けた外交努力は、今まさに実を結ぼうとしている」──衆議院の解散直後、安倍晋三首相と親しいことで知られる新聞記者が、安倍外交を手放しで褒め称える記事を書いた。
記事にどんな意図があるにせよ、実際に日本の国際的地位が向上しているならば歓迎すべきことだ。だが、果たして本当にそうなのか。
安倍官邸や官邸に近いマスコミは、日中首脳会談が開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議を「安倍外交の成果」と喧伝した。しかし、彼らのアピールとは真逆の結果が、一枚の写真に収まっている。各国首脳の集合写真だ。
中央にホスト国である中国の習近平国家主席、その脇をアメリカのオバマ大統領とロシアのプーチン大統領という二大国の首脳が固める。
では、肝心の安倍首相の立ち位置はというと、なんと後段の左端から4番目。前列左端側の韓国・朴槿恵大統領に比べても、冷遇されているように思えて仕方がないのだが……。外務省出身で元駐レバノン特命全権大使の天木直人氏が指摘する。
「国際会議の集合写真の立ち位置はホスト国が決めますが、各国は世界に存在感を示すためにどうにか良い位置で映ろうとホスト国と事前調整する。もっと中心に、もっと前にしてくれと交渉するのが、外交なんです。
今回、この集合写真によって、習近平はアメリカとロシアを最重要国とみなしていることを世界にアピールしたわけですが、一方で日本は露骨に低い位置に追いやられた。前列には、代わりに中南米の途上国やASEAN諸国といった中国が重視する国々の指導者が並べられた。安倍外交の成果が、内弁慶に過ぎなかったことが世界的に証明されてしまったわけです」