今回の解散総選挙に一際意気込むのが幸福の科学を母体とする幸福実現党だ。過去の衆院選では、大量の候補者を擁立するなど(2009年は337選挙区、2012年は62選挙区。いずれも当選者なし)、政治活動に力を注いできた同教団。しかし昨今の彼らの主張は、極右的な色彩を帯びているとの指摘も多い。ジャーナリスト・安田浩一氏が、同教団の幹部と対峙した。
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“公称”信者数だけを見れば、幸福の科学は日本最大の宗教団体だ。その数、実に1100万人。本当なのかと何度も念押しして訊ねたが、同教団の里村英一専務理事は顔色一つ変えることなく、「ええ、その通り」と胸を張る。
「うちの会員になりますと“正心法語”と呼ばれる経典をお配りしているわけです。その発行部数がこれまでに1100万部」
こちらが訝しむひまを与えない。かつては大手民放の宣伝部に籍を置いていたという里村氏は、情熱的で、自信に満ちて、饒舌だった。
だからこそ、あの世の霊魂とチャネリングすることで得られるという「霊言」に話題が及んでも、ポカンと口を開けたまま聞くしかない私を前にして、それこそソクラテスが、マルクスが、キムタクが、昭和天皇がと“各人”のエピソードを交えて熱っぽく語る。
幸福の科学は1986年、商社マンだった大川隆法氏によって設立された。初期の活動として知られているのは、信者で作家の故・景山民夫氏を筆頭に展開した激しいマスコミ批判である。写真週刊誌『フライデー』に掲載された教団批判記事への抗議をはじめ、週刊誌業界のヘアヌード掲載に反対するデモなどを各地で展開し、知名度を高めた。
そしていま、幸福の科学はこれまでとは違った文脈で存在感を増しつつある。政党・幸福実現党を牽引車とした、急激な右旋回のことだ。
ある古参の保守系運動家は「ここ2、3年、同党関係者の姿を多くのデモや街宣で見かけるようになった」と話す。
「特に慰安婦問題や領土問題などで中韓を批判するようなデモには、多くの党員が参加しています。同党発行のビラやパンフレットを参加者に配布することもあるので、すぐにわかりますよ」
11月に行われた沖縄県知事選に関しても、幸福実現党の“暗躍”が話題となった。
「自民党などが推していた仲井真弘多陣営の別働隊として幸福実現党員が、対立候補である翁長陣営を批判するビラを配布していました」(知事選を取材した地元記者)
ビラは「反共」や「中国の脅威」を煽る内容で、仲井真陣営も半ば容認していたという。こうした手法、あるいは嫌韓を主題とした“日の丸デモ”への関与といったことから、いわゆるネトウヨとの親和性の高さを指摘されているのが昨今の幸福実現党である。