鍋から立ち上るだしの香りに誘われ、思わず手を伸ばしてしまうコンビニのおでん。ロングセラーとして不動の地位を築くヒット商品の消費者戦略に、ジャーナリストの鵜飼克郎氏が迫る。
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コンビニで初めておでんを商品化したのはセブン‐イレブン。1979年のことだった。おでんは冬の定番商品と思われているが、実はコンビニ各社が本格的に商戦をスタートさせるのは9月。冬場よりも寒暖差があり、体感気温が下がる秋口のほうが、おでんの売れ行きも良いという。
最近では、おでんを通年販売する店舗があるほど、各コンビニはおでんの販売と開発に並々ならぬ力を注いでいる。
「コンビニ業界で、おでんは客を引きつける”マグネット商品”と呼ばれています。おでんは他の商品と違い、ちょっと足を延ばしてでも自分好みのコンビニに買いに行く商品なのです」
そう話すのは、おでん評論家の新井由己氏。客の”ついで買い”が期待できる商品でもあり、店舗にとっても欠かせない看板商品になっている。
「コンビニでメーカー品を売った場合の利益率は3割と言われていますが、オリジナル商品のおでんは5割を超える。廃棄ロスは店の負担となりますが、それでも儲かる商品です。よく売れる店では1日1000個、10万円を売り上げ、その半分が店の利益となる。手書きのメニューを貼り出すなど、店のオーナーがもっとも力を入れている商品と言えます」(新井氏)
それだけに、各社は仕込みや販売方法を徹底管理。店舗には、各社が独自にまとめた門外不出の『おでんマニュアル』が常備されている。