STAP細胞騒動に一応の区切りが付けられた。1年近くに渡り日本中の話題となったこのニュースから学べることはなにか。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が小保方晴子氏から学ぶ。
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割烹着姿がよく似合う小保方晴子氏がSTAP細胞について発表したのは、今年1月のことでした。いきなり華やかなスポットを浴びますが、その後さまざまな疑惑が噴出し、一転して厳しい目が向けられます。本人の「STAP細胞はありまぁす」という言葉の真偽を確かめるべく、7月からは本人と理研検証実験チームが個別に実験を行なってきました。
そして12月19日、理研は記者会見を開き「STAP現象を再現できなかった。この時点で検証実験を終了する」と発表。事実上、理研としてはSTAP細胞の存在を否定しました。小保方氏は理研に退職届を出し、21日付で退職するそうです。これでどうやら、日本中が大騒ぎになり、自殺者まで出てしまったこの問題に一応の区切りがつきました。
大人としては、ほぼ一年にわたって繰り広げられた波乱の出来事から、何を学び取ればいいのか。詳しいことは理解できていないのに、組織の側が否定したからといって「ケシカラン!」「とんだ食わせ者だ」と尻馬に乗って非難するのは、もっとも恥ずかしい行為。もし周囲にその手の人がいたら、自分が迷惑を受けたわけでもないにもかかわらず、叩きやすい相手を無邪気に叩いてしまうみっともなさを他山の石にさせてもらいましょう。
小保方氏がどうとかSTAP細胞がどうとかは別として、大人として着目したいのは、小保方氏と野依良治・理研理事長がそれぞれに発表したコメント。
小保方氏は、まず「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり」と無念をにじませつつ、「与えられた環境の中では魂の限界まで取り組み、今はただ疲れ切り、このような結果に留まってしまったことに大変困惑しております」と全力を尽くしたことを主張した上で、迷惑をかけたことへのお詫びと支援へのお礼を述べています。
高く評価できるのは、「魂の限界まで取り組み、今はただ疲れ切り」という表現。単に「全力で取り組みましたが」というよりも、はるかに迫力があります。ビジネスマンのみなさんも、仕事で頑張ったけど成果が出なかったときは「魂の限界まで取り組んで、今はただ疲れ切っています」と言ってみましょう。「それなら仕方ない」と思ってもらえそうです。
いっぽうで、結果を受けて「困惑」という言葉を使ったのは感心できません。本人にそんなつもりはなくても、どこか「他人事」のように受け取って腰が引けている印象を与えます。みなさんも、上司に「この結果について、どう思ってるんだ」と言われたときに、うっかり「困惑しています」と言うのは危険。素直に「残念だと思っています」と言ったほうが、聞く側に無用の引っ掛かりを覚えさせずに済みます。