イタリアからデザイナーが金曜日の夜に現地へ飛んで日曜日の夜に帰ってくる、というようなことまでして死守している。イタリア製品にとってデザインは”生命線”だからである。
一方、日本の地方都市で自前の産業を持って世界化している例としては、福井県鯖江市の眼鏡フレームが挙げられる。しかし、残念ながらOEM(相手先ブランド名製造)が大半で、世界に通用する自前のブランドを持っていない。デザインを他人に依存し、受託生産しているのが現状だ。
あるいは日本には、陶磁器なら薩摩焼や伊万里焼、九谷焼など素材としては素晴らしい伝統工芸品がある。しかし、海外では知名度がまだまだ低く、多くの上流家庭が食器棚に並べている常備品にはなっていない。
今こそ、産地の市町村がイタリアの地方都市のように、国家や政府に頼らず自力で世界化を目指すべきであり、その気になれば高額商品を世界中に普及・販売することも不可能ではないはずだ。
実際、イタリアに限らず、ドイツのマイセンやローゼンタール(以下、陶磁器・洋食器の産地・メーカー)、デンマークのロイヤル・コペンハーゲン、イギリスのウェッジウッド、ハンガリーのヘレンドなどはそれを実践し、世界に高額商品を売りさばいている。
日本の地方がイタリアモデルに学ぶべきことは、実に多い。もはや、選挙対策にすぎない「地方創生」などのスローガンを掲げる国家には頼っていられないのである。
※SAPIO2015年1月号