NHK紅白歌合戦の総合司会を1995年から2000年まで務めた宮本隆治氏をスペシャルインタビュー。子供の頃から歌手の物まねが得意で、紅白の司会が夢だった。NHK入局後、地方勤務を経て東京アナウンス室へ。「歌謡コンサート」などでの仕事ぶりが評価されて抜擢された。
「45歳でやっと目的地に達しました」
司会の内示は10月中旬に行なわれるという。
「もちろん社外秘。家族にもいうなといわれていましたが、女房には喋ってしまいました(笑い)。誰かにいわないと、どういう状況になるか分からない精神の剣ヶ峰の心痛があった。これを少しでも誰かに分かってほしいと思って」
紅白の司会を13年務めた先輩アナ・山川静夫氏からは、「紅白だからと、いつもと違うことはやってはいけない」と指導を受けた。タキシード用にエナメルの靴を新調したところ、本番当日、そのフィット感が気になって集中力を欠き、マイクを持って出るのを忘れたという山川氏の失敗からのアドバイスだ。そこで宮本氏は例年通り25日に知人の寿司職人と築地に買い出しに行くなど、普段と同じ生活のまま本番に臨んだという。
「パリのオペラ座に怪人がいるように、NHKホールには魔物が棲んでいます。慣れているはずのNHKホールなのに、紅白のときに出てくる“魔物”はとびきりの大物なんです」
「ミソラ発言」も「仮面ライダー紹介」(※注)も、極度の緊張を襲う“魔物”の仕業だ。宮本氏は「撃退するには練習しかない」と台本を何回も反復反芻し、なんとかノーミスで通した。思い出深いのは、第50回大会の白組司会を務めた歌舞伎俳優・中村勘九郎(故人)とのエピソードだという。