食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が、2015年の食のトレンドを予想する。
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今年ももうあとわずか。年をまたげば食のトレンドは変わるのか。そう聞かれると、つい「そうでもない」と答えたくなる。だがトレンドは少しずつでも確実にその方向を変えていく。既存の「食」が強く伝播するものがあれば、存在感を薄くなるものもある。また彗星のようにあらわれるトレンドもある。2015年、「食」はどのようなトレンドになるのだろうか。
1.機能性食品
まず、確実に来ると思われるのが「機能性食品」だ。消費者庁は2015年早々にも野菜や加工食品、サプリメントなどについて新たな「機能性表示」を導入するとされてきた。これまでできなかった、体の部位への効能を具体的に示すことができるようになり、健康の維持・増進の範囲に限り「肝臓の働きを助けます」などの表現が可能になる(※病気の治療、予防効果の表示は認められない)。
例えば韃靼そばなら「ルチンが含まれているので、正常なコレステロール値の維持に役立ちます」というような形だ。20年前に同様の制度を取り入れたアメリカでは、以降毎年7~8%成長を続け、20年で市場規模は62億ドルから345億ドルへと、約5倍に成長した。
ただし、「来春」がいつになるかは現時点ではまだ不明だ。12月2日に行われた消費者委員会では新表示基準の制度を支える法的基盤が脆弱だとして、答申案の合意に至らなかった。その結果、消費者庁のガイドライン公表もズレ込むことになり、「機能性表示」も遅れる可能性が出てきている。
2.乳製品&植物性乳様製品
「乳製品」や「植物性の乳様製品」も来る。今年の夏以降、バターが品薄になったことで改めて乳製品へと意識が向いた。手に入らない飢餓感も加わって、その価値が再認識されるようになった。今後、供給が安定する過程で不安に駆られた消費者が短期的にバターをストック買いするようになり、その結果バターを使ったメニューが食卓に多く上るようになるはずだ。
さらにこの数年人気となっていた、豆乳やアーモンドミルクなどの植物性の乳様製品もさらなる認知を得るようになるだろう。2015年の新顔としては注目されているのはライスミルク。欧米では、牛乳や大豆などのアレルギーのある人向けに乳製品の代替品として利用されていて、万人受けするクセのない味が特徴だ。前出の「機能性表示」食品の枠で露出の機会も増える可能性も高い。静かなブームとなっている、牛乳を使った和食――乳和食への応用も効きそうだ。
3.メイソンジャーサラダ
もうすでに流行っているので、やや反則気味かもしれないが、挙げないのも不自然なので「メイソンジャーサラダ」も入れておこう。密閉性の高いガラス容器にドレッシングと野菜を詰めたサラダで、数日間日持ちする。長く続く肉食ブームのなか、サイドディッシュとしての野菜の気軽な食べ方も求められているのも追い風になるはずだ。
そのほか、人気の”クロナッツ”(クロワッサン×ドーナツ)に続けとばかりに、既存のスイーツを掛けあわせた「ハイブリッドスイーツ」もブレイク必至。すでにティラミス×ロールケーキ、たい焼き×クロワッサン、フレンチトースト×ワッフル、カステラ×フレンチトーストなどさまざまなパターンが登場している。当然、数がそろえばブレイクの可能性も高い。