総選挙の“大勝利”に沸く自民党にあって、迫りくる危機を感じ取ったそぶりを見せたのが小泉進次郎氏だ。
「消費税を上げる2年半後までに経済を立て直さなければすべて自民党の責任。それを考えれば笑っている場合ではない」と苦言を呈した。
そして、選挙戦で若手議員の応援に回った際も、有権者にこう呼びかけた。
「アベノミクスの先を考えなければいけない。人口減でも活力と豊かさを引き継げる国づくりには、どの国もやったことがない成長モデルが必要だ。社会保障も若者にツケを残さないようにしなくてはならない」
進次郎氏はアベノミクスのその場しのぎの限界と失敗を近くで見て感じたのだろう。きっかけは東日本大震災の被災者の声を聞いたことだったかもしれない。
震災復興担当政務官の進次郎氏は、震災直後の自民党青年局長時代から被災地に何度も足を運んだ。叔父で小泉純一郎・元首相の秘書を務めた小泉正也氏によると、「被災地では、『安倍さんは口ばっかりで何もやらない』と、きつい言葉をしょっちゅう浴びせられたそうだ。進次郎はそれを黙って聞いて回った」という。
そうした体験をもとに、中央公論2014年7月号の鼎談でこう語っている。
〈戦後と「災後」の最大の違いは、人口増加・経済成長を前提にできるか否か。それができない中で日本がこれからも繁栄を築いていこうとしたら、国全体のモデルチェンジが避けられません〉
かつての成功体験を前提とするアベノミクスでは日本は立て直せないと断じた言い方である。
進次郎氏本人に今後の課題を直撃すると、「ありすぎ。いっぱい」とだけ答えたが、地方都市ではすでに進次郎世代の政治家たちが安倍首相とは別の困難な道を切り開こうと戦っている。