テレビ局の番組には、様々な試み、仕掛けが施される。だが、受け取る側の評価は時に紙一重だ。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析する。
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日本のテレビ局も視聴者も、クイズ番組が大好き。NHKから民放まで揃って、健康から食、国語算数、脳力、記憶力、漢字力、旅の蘊蓄とずらり…ありとあらゆるテーマについての「質問と答」が並んでいます。
真面目な性格の人が多い日本人。「その答は何でしょうか?」と質問されると、ついテレビ画面にむかって正しい答を探り出そうとがんばる。質問というものは、いわば「謎」の提示です。「謎」を掲げることによって、相手の気を惹くことができる仕掛けです。
「今なぜそれを私に聞くの?」、「その質問自体、おかしいよ」と、質問そのものにチャチャを入れたり、場をぶちこわすような発想をする人は少数派。だからこそ、日本でこれほどたくさんのクイズ番組が成り立っているのかもしれません。 謎かけスタイルの娯楽文化――クイズ番組をそうとらえてみれば、目くじらをたてることはない。質問を出され、その答を一緒に探したい人が楽しんで見ているわけですから。
けれども、謎を掲げて「気を惹く仕掛け」が、時にお門違いになることも。クイズ番組だけでなく別ジャンルに浸食しすぎれば、不愉快さにつながったりすることもある。
たとえば、天気予報。こっちは真剣に聞いている。年末年始は家族揃って外出したり、なかなか会えない人と会食したりという、特別な予定が入ってくる時期。その時に「雪が降るかもしれない」と言われたら、かなり慌てませんか。雪に慣れていない東京人なんか、聞いただけでハラハラドキドキしてしまう。
TBSの情報番組「ひるおび!」で天気予報士・森朗さんが、年末年始の天気を解説していました。その内容が何だかもやもやとはっきりしない。東京でもしかしたら雪が積もるかもしれないなどと、「匂わす」。匂わせながら、しかしはっきりしたことは言わず。あえて曖昧な口調? こんなタイミングで、天気に謎かけですか?
「天気に異変が起こるかもしれない」という情報は、たしかに視聴者の気を惹く。面白おかしく天気を語るキャラクター・森氏ならではの、視聴率を稼ぐ常套手段なのかもしれません。でも、天気予報はクイズや娯楽とは違う。必要以上の思わせぶりな態度や謎かけは無用、そう感じている視聴者、意外と多いのではないでしょうか?