自身も看護師資格を持ち、10年以上訪問看護の現場で働いてきた運営会社・誠心の吉松泰子社長が「こだわり」をこう語る。
「施設の中で過保護ともいえる介護をするのではなく、入居者に社会の一員として過ごしてもらいたいと考えました。かといって、要介護者が施設を出て働くような形での社会参加は難しい。そこで、施設の暮らしの中に社会性を持った人、つまり地域の人たちに来てもらえる仕掛けを考えました。
まず敷地の中に美味しくて安い食事処を作りました。すると、自然に近隣の人たちが敷地内に入ってくれるようになりました。
続いて皆さんが建物の中にも入ってくれるように、手作りケーキを提供するカフェ、図書館、ギャラリーを構えました。入居者は“我が家にお客さんが来てくれる”と鼻高々です。いつもきれいに着飾り、リビングで地域の人と入居者が自然に会話するようになった。それこそ私たちが目指している『社会型老人ホーム』なんです」
居室の広さは9~38平米と4タイプ(単身向け個室は9~15平米)あり、全45部屋は間取りがすべて異なる。
「将来的には、まったく新しい形の集合住宅にしたいと考えています。要介護の方だけではなく、学生やビジネスマン、ファミリーにも入居してもらい、あらゆる世代がお互いに助け合って暮らしていけるよう、さまざまなタイプの居室を作りました」(同前)
実際、入居しているのは要介護の高齢者だけではない。40代の難病患者や、夫がパーキンソン病を患う夫婦なども一緒に暮らす。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号