最高の高齢者ホームとは、どんな施設なのか。「高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)」主催、高齢者施設事業者など「高齢者ホームのプロ」21人が選考した「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」に選ばれた優良施設を実際に訪問してみよう。ここで紹介するのは、同賞の大賞に輝いた住宅型有料老人ホーム「アクラスタウン」(福岡県太宰府市)だ。
とにかくホーム全体が「明るい」。採光が工夫され、太陽光がふんだんに差し込むからだけではない。リビングやダイニングなどの共用スペースがいたるところにあり、個室のドアはいつも開いている。
「閉めるのは寝る時だけ。体調を崩して寝込んでいても、いつも誰かの声が聞こえて安心です」(入居者の70代女性)
入居者やスタッフの声だけではない。施設を訪れた家族や近隣住民、子供たちの声。笑い声や話し声、時には怒った声や泣いた声。誰かの声がいつも施設内に響き、部屋にいる人の耳にも届く──。
「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」で大賞に輝いたのは、従来の高齢者ホームのイメージを一変させる施設だった。
ぬくもりのあるログハウス風の建物は、外観・内装に無垢材をはじめ、自然素材をふんだんに採用した。その建物の周囲には門や塀が設置されていない。だから、近所の人が犬の散歩の途中に敷地内を通り抜け、近所のひとり暮らしの老人や若い親子が施設内にやってくる。
そんな時には窓ガラス越しに人工呼吸器を付けてベッドで寝ていたり、経鼻チューブをしながらリクライニング式車椅子で休んでいたりする入居者の姿が目に入る。それでも、施設の持つ独特の「明るさ」がそこに違和感を持たせない。入居者が地域社会の一員として自然に溶け込んでいるのだ。