芸能

宝田明 役者として芝居に使うべき筋肉の鍛錬をした日々語る

 俳優の宝田明は東宝のニューフェイスに合格した翌年、1954年の映画『ゴジラ』で主演デビューした。その後、日本映画黄金期を支えた二枚目スターが映画だけでなくドラマやミュージカル等でも活躍し続けたのは、東宝の演劇研究所で受けた研修のおかげだという。東宝受験と研修所時代の思い出について宝田が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 宝田明は満州で生まれ、戦後になって帰国、高校時代に友人に誘われて学生演劇の舞台に立つ。そして、1953年に東宝のニューフェイス試験を受け、六期生として合格する。

「修学旅行に必ずついてくる学校指定の写真屋さんっていますよね。その人から『宝田君、こんど東宝でニューフェイス試験があるから受験してみろよ』と言われましてね、それで履歴書を書いたんです。当時はバイトをしながらシネ・ミュージカルを観たり西部劇を観てカルチャーショックを受けていましたが、まさか自分が映画の世界に入れるとは思いもしませんでした。

 それで書類試験の日に東宝の砧撮影所に出向いたのですが、怖くなって中に入れなくてね。次のバスで帰ろうと思いながら、一時間ずっと門のところにいたんです。そしたら守衛さんが出てきて、『おい学生さん、みんな中に入ってしまったぞ』というのでその守衛さんに押されるようにして中に入ったんです。

 スタジオの中には山本嘉次郎監督や黒澤明監督、それから俳優さんたちもいて震え上がっちゃって、満足に歩けもしませんでした。それでも合格したのですが、一方で『今まで勉強したことは何だったのか』というのもあって。満州から引き揚げてきて、勉強して職につくことだけを考えていましたから。役者になるなんて、予想だにしませんでした。二者択一でした。

 それで結局は、『これで、よし』と腹を決めて役者をやっていくことにしました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
ピーター・ナバロ大統領上級顧問の動向にも注目が集まる(Getty Images)
トランプ関税の理論的支柱・ナバロ上級顧問 「中国は不公正な貿易で世界の製造業を支配、その背後にはウォール街」という“シンプルな陰謀論”で支持を集める
週刊ポスト
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン