2014年の新語・流行語大賞にノミネートされた言葉の中に「女装子(じょそこ)」がある。ネット上では有名男子校の文化祭でのミスコンテストが可愛いと評判だし、東大話法で知られる経済学者の安冨歩氏は女装する東大教授としてテレビ出演した。映画『海月姫』では、俳優の菅田将暉の女装男子ぶりがカワイイと評判だ。やはり女装は一般化したのか。
1月26日から『女装の軌跡と幸福論』と題した写真展をひらく女装コーディネーターの立花奈央子さんは「全年齢層で女装をする人が増えましたよ」という。
「昔は女装というと『性癖』だったのですが、最近は軽い変身願望で、ファッションとして女物を着るアトラクションのようなニュアンスが加わり、すごく敷居が下がりました。コスプレする感覚に近いと思います」
実際に前出の安冨教授は2014年10月のテレビ出演時、女装を始めたのは1年前で50歳になってから、好きになるのは女性なので、女装が自分のスタイルだとなかなか気づけなかったと告白していた。
では、女装はいつからカジュアル化したのか。
性癖として取り組む人が大半だった状況が動き始めたのは、2000年ごろにネットスラングを中心に「男の娘(おとこのこ)」という言葉が使われ始めてから。「男の娘」はマンガ等でジャンルを確立し、2009年に社会進出をした。5月に女装メイドがいるお店「男の娘カフェ&バーNEWTYPE」が開店し「男の娘ブーム」がやってきたのだ。ここでいう「男の娘」は、単純に女装をする男性のことを指している。
このブームを境に、女装の容姿レベルは格段に高くなったと前出の立花さんは言う。
「一番大きいのはネットで情報が簡単言えられるようになったことですが、女装という文化に女性が関わるようになったことの影響も大きいと思います。敷居が下がったことでタブー感が薄れ、女装を女友達や恋人と共有する人が増えましたね。20年くらい前は、やり方がわからなくて濃すぎるメイクなど過剰になってしまう人が多かった。でも、女性のアドバイスを受けられるようになって、メイクもファッションも程よくきれいにする情報を得られるようになりました。
メイクを教えると、男性のほうがお手入れとかマメな人が多いので、あっという間に美肌になったりするんですよ。6年前からメイクや衣装を用意して撮影する女装スタジオを開いているのですが、撮影用の服装の傾向も変わってきました。2、3年前はとにかくリボンやフリルがいっぱいついたロリータ服を希望される方が多かったのですが、最近は、女性が普段から着ている服装でという方が多いです。撮影後に外を少し歩いてきますという人も増えました」