「国土交通省において航空局は、省内で最も力を持っている部局、というのが霞が関の一致した見方だ。その航空局が、あそこまで官邸、ひいては与党の顔色を窺うようでは、国交省も所詮三流官庁だ」
霞が関の経済官庁首脳がこう鼻で笑う。航空業界においては「第三極」に位置付けられる、スカイマークを巡る経営再建問題が、とんでもなく迷走している。
急激な円安を受けての燃油価格の高騰、LCC(格安航空会社)の台頭など経営環境の激変を受けて、ここへ来てスカイマークの財務状況が急激に悪化している。
「もし仮に何の手も打たなければ、スカイマークは資金ショートを起こすことになりかねない」(大手航空会社幹部)
そしてそのことは、スカイマークの財務状況を見れば一目瞭然だ。スカイマークの2015年3月期決算は、税引後利益で136億円の赤字に陥る見通しだ。そしてその一方で、2014年9月末の現預金残高は45億円で、3月末と比べても約25億円減少しているのが実情だ。
「とりあえず売れる物はすべて売り払って現金化しているが、とうてい間に合わない。このまま行くと2015年早々にも、“Xデー”がやってくる」(スカイマーク幹部)
銀行借り入れゼロを信条として経営を進めてきたスカイマークには、メーンバンクが無い。そのため、この急場を銀行からの借り入れでしのぐことはまず不可能だ。
そうした絶体絶命のピンチに陥っていたスカイマークに手を差し伸べたのが、日本航空(JAL)だった。
スカイマークはJALに対して、航空業界ではプラチナ枠と称される羽田空港の発着便を中心に共同運航(コードシェア)を持ちかけたのである。この共同運航とは、スカイマークが運航している便の座席の一部をJALに売却し、キャッシュを得ることを意味する。 「スカイマークの西久保慎一社長としては、この共同運航が実現することでJALから約80億円の現金を得られる、という皮算用だった」(前述のスカイマーク幹部)
一方のJALにとっても、羽田発着枠面でライバルの全日空に対して劣勢に立っているため、この西久保社長の支援要請はまさに渡りに船だったと言えよう。
ところが国交省が、この両社の提携交渉にいきなり横槍を入れてきたのである。