2014-2015年次日本自動車殿堂カーオブザイヤー、2015年次RJCカーオブザイヤー、二つの栄冠を手にした車。さらに2014年日経MJヒット商品番付の小結にランクインした、スズキの軽自動車「ハスラー」。今、最も熱い視線が注がれている車の一つ、と言っていいだろう。
そのボディの色は9種類。ルーフと組み合わせたツートンカラーもあり、全部で11ものパターンから自由に色を選ぶことができる。
2014年1月、発売されるやいなや注文が殺到。同年11月末までの11か月間で販売台数は9万5314台。当初目標は月販5000台で、その1.5倍近い勢いだ。
「実用」イメージが強かった軽の市場に、こんなアクティブな新車がどうやって生まれてきたのだろうか。作家・山下柚実氏が現場を訪ねた。
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堅実で地道な実績を持つ自動車メーカー、スズキ。鈴木修会長の耳に入ってきたのは、ユーザーのこんな一言だった。
「雪道に強い軽自動車というものはないのだろうか」
かつて、同社には「Kei」という名の軽SUV(スポーツ用多目的車)があったが、今は生産を終了し、該当する車は無い。
「タイミングを同じくして、これまでとは違う新しい軽自動車を創ろう、という声が営業サイド、技術サイドの両方から上がっていました。ご存じのように軽自動車の市場は急拡大し、今や新車販売の約4割を占めています。各社似たような車を作っては鎬を削る中で、もっと面白くてもっと新しい軽を作りたいんだ、という気持ちを現場のみんなが抱いていた時でした」
そう振り返るのは、「ハスラー」の開発を担当した同社第一カーラインチーフエンジニア・高橋正志氏(45)だ。
「弊社のトールワゴンタイプの軽『ワゴンR』で、技術的にも一定の完成水準に達した、という自覚もありました」
そこで今一度、「車の楽しさとは何なのか」という根本に立ち戻ろう、と考えた。雪道も走れてキャンプや山や川にも行け、街乗りでもワクワクする軽とは、どんな車か。
「弊社の主力車『ワゴンR』をベースに、大きなタイヤを履かせて雪道や悪路も走れるSUVの機能性を盛り込む。これまで培ってきた技術が土台になるからこそ、今回はデザインという、いわば弊社の『未開拓領域』に思い切り力を注ぐことになりました」