大学生の就職活動には「定番」と呼ぶべき対策本がある。それをこなすのはもちろんいいが、視点を180度変えて、採用担当者の本音を探ってはどうだろうか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が提案する。
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「何かを制したければ、相手の論理を理解すべし」
そんな法則について考えてみたいと思います。就活に置き換えて言うならば、就活マニュアル本ではなく、採用する側の人事担当者向けの本を読め、と。
就活時期が繰り下げになった現在の三年生の就活は、不気味な様相を呈しています。上位校の学生を中心に、インターンシップで囲い込まれる動きがある一方、多くの学生はまだ動いていません。以前、このコラムでもお伝えしましたが、大学生協の昨年12月時点での就活本の売上は対前年比で激減状態でした。昨年の11月に某ビジネス誌が就活特集を組んだのですが、まだ学生も動いていないからか部数は振るわなかったようです。
とはいえ、大学での定期試験が終わり、春休みに入る2月からインターンシップが盛んになりますし、3月からはいよいよ就職ナビもオープンします。
大学生協で売れる定番の就活対策本と言えば、次の3冊(シリーズ)です。それは、自己分析は『絶対内定シリーズ』(杉村太郎・ダイヤモンド社)、業界・企業研究のための『会社四季報(就職四季報)シリーズ』(東洋経済新報社)、SPI対策は『最新最強のSPIクリア問題集』(成美堂出版)です。毎年、大学生協ではこの3冊が売れますし、品切れしないように常に補充をかけています。
もっとも、自己分析では最近はワークブック形式のものも広がりつつありますし、業界・企業研究ではビジネス雑誌の編集部などが出している業界を俯瞰できる業界地図的な本も売れています。SPI対策本は、成美堂出版のものが最初に売れるのですが、これに慣れた人や上位校の学生、理系の学生はより難易度が高いうえ解説が丁寧な洋泉社のものを買います。要するに定番がありつつも、多様化していると言えます。
とはいえ、これらは「普通の学生」が読むものです。人と同じことをしても差はつきません。「自分たちを面接する人事はどう考えているのか?」という視点も大事です。というわけで、人事担当者向けの実務書をチェックしてみてはいかがでしょうか。
今年、話題になっている本と言えば『こう変わる!新卒採用の実務』(労務行政研究所編)です。採用担当者向けに、スケジュール変更の影響と今後のあり方、インターンシップをするコツ、リクルーター制度の運用、内定者フォローのやり方、面接の手法などがまとめられています。一番の読みどころは、約300社に対する人事担当者アンケート調査でしょう。
例えば、今回のスケジュール変更について完全遵守する企業は25.1%程度にすぎず、早期広報・早期選考が32.2%、独自スケジュールで動くが27.6%と、企業は新ルールに対して遵守するわけではないという傾向が明らかです。これらのアンケートの回答データもそうですが、学生に期待することなど人事担当者のホンネもコメントで羅列されており、採用する側の論理が分かります。ネスレ日本、三幸製菓、タカラトミー、コクヨ、ワークスアプリケーションズといった企業の採用のケーススタディも載っています。