高度成長期の日本の勢いを描いた世界的名著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』から36年を経たいま、著者であるエズラ・ボーゲル氏は日本の現状をどう見ているのか、在米ジャーナリストの高濱賛氏がインタビューした。(括弧内はボーゲル氏)
日本は2010年に中国にGDPで抜かれ、現在は約2倍近い差が付くことになった。ジャパン・アズ・ナンバー3の時代、日本は今後、世界でどうプレゼンスを発揮すべきなのか。ボーゲル氏が強調したのは日本が戦後70年、その指針としてきた米国との同盟再構築ではなく、中国との友好関係を建設することだった。
「日本は今後も中国との経済的、文化的、社会的交流促進を続けるべきです。このことこそが日本が直面しうる偶発的な事態に備える防衛政策を形成するはずでしょう。日本が対中、そして対韓関係を改善させる上で必要なことは、日本が1894年(日清戦争)から1945年(第二次世界大戦)にかけて中国に与えた損害・毀損について国民レベルでの、より幅広い議論をすることだと思います」
ボーゲル氏は中国との関係改善に関し、昨年4月に朝日新聞のインタビューに応じた際にも「日米の同盟関係は世界中の難問を解決するという役割を担ってきた。と同時にどういう国と話す必要があるかといえば中国だ。軍事力、経済力を増す中国は国際問題で日米と異なった意見をもつことが多く、中国が賛成しないと問題は解決しない」と答えている。さらに、日本の政治家は中国のことを敵視するばかりで現実的な選択肢を失っている、と指摘している。その代表格が安倍首相だ。
「2012年末に政権に返り咲いた安倍首相は、就任直後は中国には強硬な姿勢をとることで、中国がより強力な軍事的圧力を日本にかけても目的を達成することは出来ないということを示そうとしました。ところが2013年末に自らが靖国神社を参拝したことが対米、対中、対韓関係に支障を生じたのに気づき、(結果的に)慎重になりました」
日本が世界における存在感を失うにつれ、日本の政治家は長期的なビジョンを失ったとボーゲル氏は考える。