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深刻な人不足の介護職 外国人頼りで解決できるとは思えない 

 介護職に外国人を導入する動きが広がっている。定着率の悪さが理由だが、安易な解決策にならないか。介護職の問題について、コラムニストのオバタカズユキ氏が斬り込む。

 * * *
 1980年代前半に「ジャパゆきさん」という言葉が流行した。出稼ぎでやってきたフィリピーナを始めとする東南アジアの女性たちを指す造語だ。その労働力の調達にはたいて暴力団がからんでおり、女性たちは「エンターテイナー」として夜の労働に従事。不法滞在や給料不払いなどのごたごたも多発し、当時は大きな社会問題となった。

 あれから30年。今でも日本でセックスワークに就いている外国人女性は少なくない。だが、こんどの新しい労働力は国が調達しようとしている。労働現場は人不足が深刻な介護業界だ。厚生労働省が「外国人技能実習制度」の対象職種を介護職にも広げ、最長5年で実習生の受け入れを計画している。

 これまでも経済連携協定(EPA)の枠組みで、インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士の候補者を受け入れてきた。だが、今年の1月までに累計1538人中481人が帰国してしまった。5年以内に国家資格の介護福祉士試験に合格しなければならない、と定めたハードルが高すぎるためと説明されている。

 このままでは団塊の世代が後期高齢者となる2025年に、介護職員が30万人不足してしまう。なら、「外国人技能実習制度」では受け入れのハードルを下げようとなった。どのぐらい下げるかといえば、入国時点での日本語の能力が小学校低学年程度あればいいそうである。

 実習2年目に入るまでに小学校高学年程度の日本語能力の習得を求めるとのことだが、何にしてもかなり大胆なハードルの下げ方だ。介護が小学生レベルの言語運用でこなせるとは、常識的に考えにくい。ちょっとしたコミュニケーションのミスが事故に直結しやすい仕事なのだ。介護業界の意見も加味されたらしいが、こなせると判断した業界の偉い人たちがどれだけ現場を把握しているか疑問だ。

 2015年度中の受け入れ開始を目指しているこのプロジェクト。でも、深刻な人不足を補うボリュームで海外から労働力がやってくるものだろうか。「ジャパン・アズ・ナンバー1」だった頃ならいざ知らず、うちらは落ち目でまわりの多くはぐいぐい経済発展している昨今である。日本人が敬遠する仕事だから外国人に任せよう、との発想自体が世界をナメすぎてはいないか。

 全国規模のデータは見当たらなかったのだが、例えば静岡県では、2014年度に外国人介護職員の雇用人数が初めて減少したという(産経ニュース)。県はその要因を〈個別の事情もあるが、低い給与により、他業種への転職が考えられる〉としている。

 そう、日本の給与は諸外国と比べてかつてのように高くはない。とりわけ介護職の給与は安い。日本人の介護職員不足も、一番の理由は待遇の悪さだ。

 介護職の給与については、「平均月給は約22万円。すべての職の平均額よりも10万円安い」とよく指摘される。この数字のソースは、厚生労働省の「平成25年賃金構造基本統計調査」で、そこにはたしかに「福祉施設介護員」の1ヵ月当たりの給与額が「218.6千円」とある。しかし、現実は月給20万円以上の介護の職を見つけるのは簡単じゃない。現実はもっと厳しく、正規の職員でも額面20万円未満、手取り15万円前後というあたりが一般的なのだ。非正規の場合は、たいてい時給がその都道府県の最低賃金とほぼ同じである。

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