新潟に新しいAKBの新しいグループ「NGT48」が誕生する。しかし同地には10年前から活動する地元アイドルグループがすでにある。「黒船来襲」にさぞや複雑な心境……と思いきや、大人力コラムニストの石原壮一郎氏は「彼女らの『大人力』に感動した」と語る。
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どんどん増殖を続けているAKB48グループ。1月25日には、新潟を拠点とする新たなアイドルグループ「NGT48」が10月に始動することが発表されました。このニュースが流れた途端、激しく動揺したのが、新潟では大人気のご当地アイドル「Negicco(ねぎっこ)」を応援している人たちです。
「Negicco」は2003年から活動を続けている3人組(当初は4人)グループで、元々は新潟の名産「やわ肌ねぎ」をPRするために結成されました。ねぎを手に持って踊るなど、12年にわたる地道でケナゲな努力が徐々に実を結び、最近では田島貴男や小西康陽といった大物ミュージシャンが楽曲を提供したり、新曲がオリコンCDシングルのディリ―ランキングで1位になったりと、全国的にも知名度を獲得し始めています。
そんなさ中に強敵が登場したことに対して、マツコ・デラックスがテレビ番組で「Negiccoがかわいそうだよ。頑張ってきたんだよ、10年も」と発言。このことがニュースになって、一気にNegiccoに注目が集まりました。結果的には、NegiccoにとってもNGT48にとっても、何よりあたたかいエールになったと言えるでしょう。
そして、素晴らしかったのが、Negiccoのメンバーたちの大人力の高さ。考えようによっては「勘弁してよー」と文句のひとつも言いたくなる大ピンチですが、彼女たちはツイッターに、次のような大人なセリフを書き込みました。
「NGT 48さん!」「新潟可愛い子多いのでかなりいいグループになると思います」(Kaede)
「対決とかじゃなくて、誰かも書いてくれていたけど、一緒に新潟を盛り上げて行けたらいいなと思います」(Megu)
「のりしおポテチ探し歩いてました♡笑」(Nao)
ぜんぜん関係ないノンキなツイートも含めて、NGT48を敵視するのではなく、歓迎して迎え入れようという姿勢を素早く示しました。NGT48のニュースをきっかけにNegiccoを知った人たちは、もし彼女たちがプンスカ怒っていたら、さぞ幻滅したことでしょう。大人な反応をしたことで、多くの人が「おお、いい子たちじゃないか」と好感を抱いたはず。じつに鮮やかに、ピンチをチャンスに変えました。今年は全国ツアーを行なうという彼女たちのさらなる活躍や、新潟のアイドルシーンの盛り上がりが楽しみです。