日本には睡眠に悩みを持つ人は2000万人を超えるといわれる。また、今の時期は日照時間が短いため、気持ちを安定させる脳内物質「セロトニン」が不足し、結果として不眠に陥る人々が激増するときでもある。睡眠不足ががんやうつ病、糖尿病などの生活習慣病を悪化させることはよく知られているが、睡眠にはまだ解明されていない部分も多い。その謎に挑んだのが順天堂大学の小林弘幸教授だ。
どうすれば快適な眠りを手に入れることができるのか? このほど『快眠したければ「首」を緩めなさい』(小学館刊)を上梓した自律神経研究の第一人者である小林教授に話を聞いた。
* * *
眠れない、または眠っても疲れがとれないなど睡眠の質が悪い方々には特徴があります。それは首がガチガチに凝り固まっていることです。この首の凝りこそが不眠の最大の原因です。首は脳と体をつなぐ橋です。頭の重さは4~6㎏あります。体重の1割近くもある重さを首の骨と筋肉で支えているわけです。
本来、適度な緩みのある正常な首の状態では頸椎は30~40度カーブしていて、それがバネのような役割を果たし、日々の行動の中でたとえ多少の頭の位置のズレがあっても、その負荷を上手く吸収し、首の筋肉のこわばりを防いでくれます。
ところが、最近はパソコンやスマートフォンの普及によって、猫背で、あるいはうつむいた姿勢で作業する人が増えています。そういう姿勢をとり続けることによって頭の位置はつねに脊柱から前にズレた状態となり、首の筋肉がこわばり、いわゆるストレートネックが引き起こされてしまいます。これによって首の血行は悪くなり、気がつけば慢性疲労感、不眠といった状態に陥ってしまうというわけです。
また正しい姿勢を心がけていてもパソコンやスマホの長時間使用は、それだけで首まわりの筋肉を疲労させてしまいます。それはブルーライトのためです。ブルーライトは、波長の短い光で、紫外線に近く、強いエネルギーを持っています。このブルーライトが目を強く刺激し、快眠に必要な副交感神経の働きを下げ、交感神経の働きを活発化させてしまうというわけです。また、ストレスや不規則な生活も副交感神経の働きを下げてしまいます。まさに現代人にとっては避けて通れないことなのです。
だからこそ、「首を緩める」ことが大切なのです。