重箱の隅をつつくように管理・干渉することを、否定的な意味を込めて「マイクロ・マネージメント」と呼ぶ。大前研一氏が、贈与税の非課税制度を例にあげ、安倍政権によるマイクロ・マネージメント、規制強化について指摘する。
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会社で最も嫌われる上司はどんなタイプかご存じだろうか? 英語で「マイクロ・マネージャー」、すなわち部下の行動を箸の上げ下ろしまで細かくチェックして、いちいち文句をつける上司である。部下には意思決定をいっさい任せず、報告書や領収書の瑕疵(かし)といった些細(ささい)な点まで重箱の隅をつつくように管理・干渉することを、否定的な意味を込めて「マイクロ・マネージメント」というのである。
そんなマイクロ・マネージメントの典型が、安倍政権だ。安倍政治というのは、ひと言で言えば“官僚依存による中央集権の統制社会”である。つまり、中央政府の役人が細かいことまで自分たちの権限で決め、国民や地方や企業に押し付けている。その規制の中で“目こぼしする”のも“お灸をすえる”のも役人だ。
安倍政権がやっていることは規制緩和どころか規制強化であり、役人が省利省益を拡大するためのマネージメント自体が目的になっている。だから、地方創生や経済成長には全くつながっていない。
一例は、昨年から始まった「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」だ。これは親や祖父母が30歳未満の子供や孫に教育資金を贈った場合、1人当たり1500万円まで贈与税がかからないという制度である。
しかし、この制度を使うためには、金融機関に子供や孫の名義で専用口座を開いて贈与する資金を入金し、そこから入学金や授業料、保育料、学用品の購入費、修学旅行費、給食費などを引き出して支払ったら、使途が教育資金であることを証明する書類(領収書など)を金融機関に提出しなければならない、という面倒くさいルールがある。しかも、入金した資金を30歳までに使い切らなかった場合は、口座の残額が贈与税の対象になる。