期待の大きさゆえの反動というものもある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、今回分析するのは「金曜夜の恋」である。
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今クールの民放連続ドラマは、3強といわれる『○○妻』『デート~恋とはどんなものかしら~』『DOCTORS3~最強の名医』の争いとか。しかしもうひとつ、一拍遅れてスタートしたドラマの初回に、驚きのあまり目が離せず。
『セカンド・ラブ』(テレビ朝日系金曜午後11:15)。いったいなぜ、どうして? 今どきこのようなドラマが、出来あがってきたのか? 内容よりもむしろその「生成過程」の方に、興味がそそられてしまいます。
脚本は恋愛ドラマの名手とされる大石静、「昼メロ」ならぬ「夜メロ」をねらう、という鳴り物入り。主人公は、チャンスがつかめず芽が出ないコンテンポラリーダンサーの平慶(亀梨和也)と、高校で化学教師をしている西原結唯(深田恭子)。女教師が屋上で、背伸び。その姿をふと見かけたダンサーが、彼女に一目惚れ。
学校の正門に現れてストーカー状態。一目惚れ→押しかけ→待ち伏せ→キス→ベットイン。あまりの単線。あまりの単刀直入。初回でここまで展開。主人公たちの感情の変化は置き去り。視聴者はどこにどう感情移入して見ればいいのか、とまどう。このドラマの狙いが、ただただ即物的な「亀梨」「裸」「キス」「ベットシーン」という記号にあるからでしょうか?
「夜メロ」と言いますが、メロドラマのメロとは、メロディのメロ。そもそも「歌」の意味。そして「ドラマ」はまさしく「劇」。「メロドラマ」の語源は歌劇。そこから、情に訴え感情を揺さぶるような、通俗的・感傷的な恋愛ドラマを示すようになったとか。しかし、このドラマは? どこに情感? どこに感傷?
深キョンが演じる化学教師の立ち位置も何だかとらえにくい。教師としてのプライドも知性も感じないし、私の人生は目的がない、女としては年をとってしまってダメだ、と内面吐露が続く。
しかし、女を捨てているのかと思えばそうも見えない。くっきりアイラインにファンデーション厚塗り、同僚教師と不倫。加齢とともに増していく閉塞感とやらが、うまく伝わってこない。何をどうしたいのか、いったい何に呻吟しているのか。
亀梨くんのダンスシーンも何だか痛い。カット割りでつないで延々と踊りのシーン。でもコンテンポラリーダンスというより、体操でしょうか。肉体美を見せたいのなら、もう少し別の方法があるのでは。ドラマのための記者会見で「『夜メロの亀梨』と呼ばれるような」「ジャニーズのセックスシンボルを目指す!」と威勢良く語っていたその言葉が空しく響く。