「年金の受給開始年齢を引き上げるから国民は働き続けろ」という厚労省の号令の下、希望者全員を65歳まで雇用することを企業に義務付けた「改正高年齢者雇用安定法」が施行されて丸2年になろうとしている。
「働き続ける」ことは当たり前になってきたが、制度を知らずに働くと思わぬ損をするケースがある。「リタイア貧乏」に陥る人生には理由があった。
60歳以降に働く場合、「在職老齢年金」制度には十分な注意が必要だ。「給料+年金」が28万円を超えた場合(※注)、「オーバー分の2分の1」の年金がカットされる。この額は、2015年4月に47万円へと変更される。
【※注】65歳未満は「28万円」だが、65歳以降は給料と年金の合計が「46万円」を超えるとオーバー分は2分の1の年金がカットされる。この額は、2015年4月に47万円へと変更される。
ところが、年金カットは「仕方ないこと」ではないのだ。働き方を工夫することで、カットされない老後もある。そこがリタイア貧乏とリタイア貴族を分ける。
大企業では、年金カットの仕組みを、定年前のセミナーなどで社員に教えている。キリンビールでは「定年を控えた社員を対象に、外部講師を招いたセミナーを開き、在職老齢年金制度の内容なども周知するようにしている」という。パナソニックや三井住友銀行なども同様のセミナーを設けているが、まだ一部企業に限られ、多くのサラリーマンには知られていない。
「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が、年金を減らされない働き方についてこう語る。
「『在職老齢年金』は、厚生年金に加入して働きながら年金を受け取っている人が対象になります。逆に正社員の4分の3未満の時間で働けば制度上は厚生年金に加入しなくて済むので、年金はカットされません。たとえば正社員の所定労働時間が『週40時間』なら、『週30時間未満』となります。
また、厚生年金が適用されない従業員5人未満の小規模な個人事務所などで働く方法もあります。そうすれば年金をカットされずに全額受け取れます」
このような「年金を減らされない働き方」は、これまでも本誌で紹介したことがあるが、それを一歩進めて活用している例もある。