1976年に始まった後発の映画会社、角川映画の初期を支えたのは、石坂浩二が主演し、市川崑がメガホンをとった金田一耕助シリーズだった。その第一作『犬神家の一族』を2006年にリメイクした時、30年前のオリジナルからラストシーンだけが変わった理由について石坂が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。
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石坂浩二は1976年、角川映画の第一作目となった市川崑監督作品『犬神家の一族』で、主人公の名探偵・金田一耕助を演じた。映画は大ヒットし、後にシリーズ化されることになる。
「市川監督とトヨタのコマーシャルを撮っている時に『映画に出ないか』と声をかけられたのが最初です。しばらくしてお目にかかった際に『金田一をやりたい』と。でも、今まで映画化されてきたのは背広を着てピストルを持っているのばかりでしたから『そんなことはできない』とお断りしました。ところが監督は『今回は原作通りにやりたい』と。それならやれるかもしれないと思いました。
監督からは髪を伸ばすように言われていましたが、単に長くするとヒッピーみたいになって面白くないんです。それでパーマをかけることにして、そのパーマを解いて、色を抜いてからまた色をかけて……という風にして髪の毛をギシギシにしました。少し引っ張ったら抜けるどころか、切れるくらいに髪を傷めていきました」
『犬神家~』は2006年に石坂=市川のコンビでリメイクされた。ディテールまでオリジナル版が再現された本作で、ラストシーンだけが異なっている。オリジナルでは金田一は逃げるように事件の町から去っているのに対し、リメイク版では別れの挨拶をしているのだ。
「監督は金田一を神様や天使のような存在だと言っていました。たしかに彼は傍観者だとは思うのですが、僕はそれだけでなく運命論者とも思います。先祖からの血の流れに起因した事件は、あるところまで行かないと片が付かないと思って、金田一はあえて見過ごしている。だから、全てが終わってから解答を出す。