芸能

80歳の名脇役・品川徹の「乾物的存在感」は異色の劇団に由来

 ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏。近作のドラマで独特の存在感を発揮している80歳の怪優とは、かつて同じ空間を共有したことがあったという。

 * * *
 出汁をとる時も煮物にも……いろいろな料理に使える。噛んでも噛んでも味が消えず、じわじわっとまた味が滲み出してくる。そんな、乾物のような魅力。最近、ドラマでよく見かける一古老のことです。

 痩せた首筋、眉間に刻まれたシワ、顔にかかる白髪、飄々とした語り口。つい、仙人を連想してしまう。その役者の名は、品川徹。1935年生まれというから齢80を迎えられるお方です。

 注目のドラマ『だから荒野』(NHKBS日曜日午後10時)で、長崎の被爆体験を語り続ける孤独な老人を怪演しています。

 抑揚をおさえた口調。みだりに感情を出さない顔。安易に動かさない身体。その人のまわりに漂う、静けさ。存在が静かだからよけいに、人物が持つ歴史や重ねてきた体験について、思いを馳せたくなる。想像力をかきたてられる。奥行きを感じる。人間はぺらぺらと口先で説明できることだけで生きてはいない--当り前だけれど、なかなか最近見ることのできなくなった人物像が、そこに浮き上がる。

 印象に残る品川氏の演技。いぶし銀のような存在感。実は最近しばしばテレビ画面にお目見えしています。大河ドラマ『花燃ゆ』では、野山獄囚人の古参・大深虎之丞役。『梅ちゃん先生』『MOZU』『金田一少年の事件簿』『クロコーチ』など人気ドラマに登場し、映画の出演も数多い。

 昨今のテレビ文化の中にあって、噛んでも噛んでも味が出てくる、乾物的存在感。簡単には消費され尽くされない品川氏の凄みは、どこに由来しているのでしょうか?

 実は品川氏はアングラ劇団の出身。1970~80年代に注目を集めた劇団「転形劇場」の一員だった履歴を持っています。何を隠そう、今ではテレビで人気の大杉蓮氏もメンバーの一人だった異色の劇団です。

 30年ほど前、私自身もその舞台に足を運びました。こう言っては何ですが、まったくもって大衆ウケする舞台ではなかった。アバンギャルド。独創的。アーティスティック。なぜなら、2時間を超える舞台に、台詞がなかったのですから。

 時間の流れ方も、日常とはまったく違っていた。役者が1メートル前進するのに、3分も5分もかかる。鍛え上げられた筋肉がなければ、決して演じられないスローモーションのような動作。

 たとえば代表作『水の駅』では、舞台の上に、ただ一筋の水が糸のように落ちていました。そこへ役者が手を差し延べる。手のひらに水を受ける。その瞬間。しーん。水音は消え、ただただ沈黙だけが暗がりに広がっていく……。

「しーん」を表現するために創られたような芝居。台詞も動きも究極の引き算。まるで、今の情報氾濫社会と正反対のような静謐な世界。そんな前衛的舞台の経験が、今の品川さんの中に結晶しているのかもしれません。

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン